昭和女子大学附属昭和小学校
Lead yourself! “自分リーダーシップ”を育む5つの柱
昭和女子大学附属昭和小学校では、2022年4月に前田崇司先生が校長として着任。統括校長の真下峯子先生とともに、昭和小学校の伝統を大切にしながら、新しい教育を進めていきます。自分自身に対するリーダーシップを育むための5つの柱とその具体例について、真下峯子先生と前田崇司先生にお話を聞きました。
昭和女子大学附属昭和小学校 統括校長 真下峯子先生のお話
昭和女子大学附属昭和小学校 校長 前田崇司先生のお話
統括校長 真下峯子先生
校長 前田崇司先生
昭和女子大学附属昭和小学校 統括校長 真下峯子先生のお話
リーダーシップ教育の推進
2022年度の学校案内には、「Lead yourself 自分リーダーシップを発揮できる子に。」というコンセプトを打ち出しました。本校が考えるリーダーシップとは、自分自身に対するリーダーシップを発揮することだと考えています。「自分っていいよね」と思えるようになり、「自分にはこんないいところがある」と語れるようになってほしいのです。本校の教育目標である「目あてをさして進む人」「まごころを尽くす人」「からだを丈夫にする人」をもとに、自分リーダーシップを育む5つの柱として、「学ぶ喜びに基づく確かな学力・思考力」「多様性社会を生きる人間力」「世界を広げるグローバルマインド&スキル」「自由な好奇心・創造力・プレゼン力」「日々の、丈夫な体づくり」を掲げています。
校長に着任した前田先生は、横浜市立小学校での教員や校長としての経験だけでなく、教育センターや横浜市教育委員会でも様々な取り組みを行ってきました。これまでに取り組んできた課題は、教職員の専門性を高める学校組織を構築するためのメンターチーム、教員のキャリアステージにおける人材育成指標づくり、体育教師の視点からの健康教育、人権やいじめ問題、コロナ対策など、多岐にわたります。前田先生に来ていただけたことは、教員にとっても非常に心強いです。今年度からは校長としての仕事は前田先生へバトンタッチして、私は別の側面からバックアップしていきます。
英語指導の強化
2022年度の1年生から、新しい英語教育「e-MAP」*を開始しました。「e-MAP」は、外国語を通して教科を学ぶCLIL(Content and Language Integrated Learning) という学習方法をもとに本校が独自に開発したプログラムです。実技教科(音楽、図工、体育)のうちの各1時間を、専科教員と英語科教員のティームティーチングで指導します。実技教科の指導目標は、今までと変わりません。一条校*のカリキュラム内でCLILを導入し、英語の授業(週2時間)と「e-MAP」(週3時間)を合わせて週5時間、英語に触れる機会をつくりました。
「e-MAP」では、場面によって日本語と英語の両方を使い分けながら指導していきます。CLILの利点は、体験的に教科内容を学習しながら、自然な形で英語に触れる機会を増やせるという点です。先日、1年生にとって初めてとなる「e-MAP」(音楽)の授業が行われました。「Stand up!」といった簡単な指示は英語で行い、校歌は日本語で歌うなど、英語の授業とは違う目標のもとで授業が進められます。英語指導の強化に向けて、ネイティブ教員も増員しました。昨年度はキャンパス内にあるBST(British School in Tokyo SHOWA)と動画交換などを行いましたが、今年度はこれまで以上に交流していきたいと考えています。
*「e-MAP」は、英語(English)、音楽(Music)、図工(Art)、体育(Physical Education)の頭文字。
*一条校とは、学校教育法で定められた学校。
ICTの活用、STEAM教育、データサイエンス教育の推進
近年注目されているデータサイエンス教育は、算数の学習指導要領にも入っています。文科省は早くから、数を見てビッグデータにつなげる教育をしましょうと言っていますが、小学校では計算のスキルなどが優先されがちです。本校では、例えば人流などの数字を見せて、いくつかの候補地の中からコンビニをどこに出店すればいいか考えさせるような授業にも力を入れていきます。昭和女子大学では、2021年度にデータサイエンス科目を一般教養として開設し、2022年度からは全学部生に対してデータサイエンス副専攻プログラムを導入しました。条件を満たした学生には「昭和女子大学データサイエンス認定証」が授与されるプログラムとなっており、予想以上に多くの学生が受講しています。今後、データサイエンス教育に関しても、小中高大で連携を深めていきたいです。また、プログラミング教育も含めて、STEAM教育*も推進していきます。
*STEAM教育は、Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics 等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育。
昨年度に1人1台iPadを導入し、調べ学習をはじめ、動画を撮ってナレーションを吹き込むなど、様々な教科で活用しています。子どもたちはスポンジのように、新しいことを吸収していきます。ですから、私たち教員も、学び続けることが必要です。今までやってきたことを改めて見直し、それがなぜ大切なのか、なぜやりたいのかを考え、ブラッシュアップしながら、必要であれば新しいものも取り入れていきます。教員が変わって進化すると、進化に子どもたちがついてくることを実感しています。進化し続けていると、ただ「遊んで!」と懐いてくるのではなく、信頼されていることが感じ取れるのです。
絶対基礎学力定着と、非認知能力の伸長
従来の学力テストで測定している能力を認知能力(見える学力)、集中力やコミュニケーション能力など、学力テストでは測定できない能力は非認知能力(見えない学力)と呼ばれています。本校では、評価ツール「Ai GROW」を活用し、非認知能力を可視化して分析しました。その結果、非認知能力の評価が高い子は、しっかりと学習もできていることがわかります。非認知能力が認知能力の土台となっているので、小学校教育の中で非認知能力を育むことが重要です。サポートが必要な子には、どこで困っているかをエビデンスで把握して、必要なサポートができる環境を整えていきます。一人ひとりの学習を丁寧に見ていく体勢を強化して、個別最適化の実現を目指します。
キャリア教育の充実
今年度は、キャリア教育も充実させていきたいと考えています。特に男子は、何のために中学校受験をするのか、その先に何を見るのかを明確にした上で、進むべき学校を決めることが大切です。女子も、内部進学する子ばかりではありません。内部進学する場合でも、今の自分やなりたい自分について考えることが必要です。それらを踏まえて、保護者に対してもキャリア教育を行っていきます。第1回は4月22日に、「グローバル社会における多様な進路」をテーマとして、外部講師を招いて開催しました。今後も、中学受験だけでなく、世の中がどう変わっていくか知る機会として、講演会などを企画していきます。子ども同士で成長しあえるように、保護者の皆さんも学校と協働して取り組んでいただきたいです。
本校では、入学前にしっかり学力をつけて伸びきった状態ではなく、伸びる素地を持った子どもたちに、ぜひ入学してほしいと考えています。日常の様々な疑問に、「なぜだろう?」「どうして?」と疑問を投げかけられる子を育てていきたいです。そういった力が、たいへんな時代であり、面白い時代でもある今、必要な力だと思います。
昭和女子大学附属昭和小学校 校長 前田崇司先生のお話
自己実現をはかりながら、共に向上していける力
本校の子どもたちと接して、建学の精神「世の光となろう」、そして3つの目標を大事にしていきたいと改めて感じました。そして、これらをじっくり考えていくと、やはり今年度からチャレンジしていく「リーダーシップ」がキーになると思います。着任してまだ数週間ですが、この部分はもっと伸ばせると確信しました。
本校が目指すリーダーシップは、リーダーという立場でみんなをぐいぐい引っ張っていくという意味のリーダーシップではなく、一人ひとりが持つ、自分自身に対するリーダーシップです。友達のため、クラスのため、学校のために、自己実現をはかりながら、共に向上していけるような、資質・能力としてのリーダーシップを身につけさせていきたいと考えています。それは、誰もが発揮できますし、開発することもできるものです。役割や立場などに限らず、クラスの授業でも意見をしっかり言えるなど、チームや組織の中に自分も参画し、誰かのために貢献していけるような、そんなリーダーシップを発揮できるようにしていきたいと思っています。
学校生活は、日々の授業こそが命
学校生活のほとんどは授業なので、授業こそが命だと考えています。子どもが変わるためには、授業をどう改善していくかが重要であり、その授業のもとになるのはカリキュラムです。選択集中したり、多彩なメニューを取り入れたり、教科横断するなどして、カリキュラムをしっかりと構築していきます。それらが全部リンクして、リーダーシップにつながっていくのです。ICTや英語などの先駆的な学びに対する教員たちの意欲面も、昨年度に真下先生が種を蒔いてくださったので、それぞれに上がっていることが伝わってきます。
新型コロナの影響などもあり、社会は著しく変化しています。宿泊行事や異学年交流といった「昭和」の伝統を大切にしながらも、伝統にプラスアルファをして、自分自身の問題を解決する力を発揮できるように、先を見据えて手をかけていく必要があります。具体的には、グローバルにどう向き合うか、そしてそのツールとしての英語です。ICTを活用した教育なども、学びの中で使っていけるようにブラッシュアップしていきます。一方で、人づくりの基礎は小学校期にあるので、保護者の皆様とともに一緒に育てていきましょうというスタンスを大切にしていきたいです。「自分っていいな」と思い、かけがえのない存在だと感じられることが重要であり、自尊感情の育成が基本となります。子どもの発達段階を考慮しつつ様々な体験やチャレンジが組み込めるように、MM体制(Mashimo&Maeda)で取り組んでいきます。