取材レポート

東京女学館小学校

2024年度入学者から36人学級で、より手厚い教育を展開

東京女学館小学校は、「高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成」を教育目標として掲げ、「特色ある教育活動」と「授業の充実」を教育の柱としています。これまで以上に手厚い教育を実現させるために、2024年度入学者から募集人員を72名に減らして1クラス36名で授業を展開。その狙いや今年度から再開されるタスマニア研修などについて、校長の盛永裕一先生にお話を聞きました。

東京女学館小学校 校長 盛永裕一先生のお話
36人学級にすることによる大きな変化
「国際理解」から「とびら」へ
オーストラリア・タスマニア研修の再開
「特色ある教育活動」と「授業の充実」
校長 盛永裕一先生

校長 盛永裕一先生

東京女学館小学校 校長 盛永裕一先生のお話

36人学級にすることによる大きな変化

今の時代、算数や国語などの学習面だけでなく、生活面なども含めて、「個に応じる」ことが一層求められてきたと感じています。じっくりと議論を重ねて、2024年度から36人学級とするために募集人員を1割減らすことになりました。1クラスで4人減らすことは、1時間の授業で考えれば小さなことかもしれませんが、1年間を通して考えると大きな変化があると考えています。例えば作文指導をするときには、一人ひとりにかけることができる時間が増えます。一方、テストの採点などの時間削減ができるので、その分一人ひとりと向き合う時間にまわすことができます。4人1組で班をつくるときも今までより班が1つ減るので、教員が各班をまわって声をかける回数も増えるでしょう。机の数も減るので、教室内で先生が子どもたちの机を自由に行き来できるスペースも確保できます。

40人のときにかかっていた時間を10とすると、人数が1割減るので9割の時間でできるようになり、残りの1割を他のことに使えるようになるということです。この1割を1年間積み重ねていくと、かなり大きな変化となるでしょう。子どもたちの伸ばしてあげたい部分をきめ細やかに指導する時間が増えます。このことは、子どもたちにとっても学校での生活に安心感やゆとりが感じられるものになります。

「国際理解」から「とびら」へ

教育の柱となっている特色ある教育活動は、これまで「すずかけ」「つばさ」「国際理解」という名称でしたが、今年度から「国際理解」を「とびら」と改称しました。「すずかけ」は、華道や茶道、着付け、日本舞踊など、日本の文化や伝統から作法を学び、日本人としてのアイデンティティーと高い品性を身につけることを目的としています。総合学習の一部である「つばさ」は、体験学習と情報教育です。「日本の伝統文化」や「体験学習・情報教育」と呼ばずに「すずかけ」「つばさ」と呼ぶことで、箱を開けてみないとわからないプレゼントのような「なんだろう?」という気持ちがわいてくると思います。「国際理解」にもそのような気持ちを持ってほしいという思いがあり、他の2つと揃える形で、新名称を教員から募集しました。新名称の「とびら」には、「自分で扉を開けて世界に羽ばたく力」や「自分で自分の扉を開ける力」を育んでほしいという思いが込められています。

オーストラリア・タスマニア研修の再開

昨年度はオンラインでの交流でしたが、今年度から、オーストラリア・タスマニア研修も再開します。今回は6年生22人が参加することになりました。11日間のうち、3泊4日は2人1組でホームステイをして異文化を体験します。提携校であるファーン校は、1935年創立の名門女子校です。本校と積極的に交流活動を行っており、日本語教育にも力をいれています。ファーン校には4日間通い、現地の子どもたちと一緒にスポーツをしたりクッキングをしたりします。現地の人に日本舞踊を披露したり、茶道や書道を伝えたりするジャパニーズデイも組まれており、「すずかけ」の授業で体得したことを発信型の学習へと発展させています。

私は30年ほど前に、文部省派遣の教員として3年間、ニュージーランドの日本人学校で教えていた経験があります。現地校の教室を1つ借りて日本人学校として教育を行っていたので、現地校の教員との交流もあり、休み時間には現地の子と日本人の子たちが一緒に遊んでいました。私は午前中に日本人の子どもに日本の教科書を使った授業をし、午後はニュージーランドの子どもに日本語や日本の文化を教えていました。現地校からのリクエストに応えて、七夕や端午の節句、新幹線、日本のロックバンドなど、日本の文化を英語で教えていたのです。そのとき私は、日本人であるのに日本のことをよく知らない自分に気づきました。日本の文化を知らないと比べることができないので、異文化を理解することは難しいのです。帰国してからも長く国際理解の教育に携わってきましたが、そのことを強く感じています。ですから本校の「すずかけ」は、「とびら」にもつながる教育活動と考えています。

「特色ある教育活動」と「授業の充実」

本校は「特色ある教育活動」が注目されがちですが、「すずかけ」「つばさ」「とびら」を1本の柱、「授業の充実」をもう1本の柱として、2本の柱で教育目標の具現化を目指しています。授業は教員が一方的に話をするようなスタイルではなく、子どもたちが公式を自ら発見したり、心の奥底から登場人物になって感動したりするような、問題解決型のスタイルを取り入れています。そして「相互啓発」を呼び起こせるような、子ども同士がお互いに高め合える授業を目指しています。教員も校内研究で授業を見せ合うなどして、相互啓発しています。

私も全クラスの授業を見て、授業をした先生と意見交換をしています。また、1年間を通して、全クラスで授業をしました。教員とは、クラスごとの雰囲気の違いや、子どもの実態の違いに応じた授業について話したり、普段は発言しない子が今日は発言してたなど、教員から子どもたちの情報を得たりすることもできました。私は授業の話をするのが大好きなのだと、改めて感じています。日々の授業をうまく展開することができれば、学級全体を高めていくことができ、学校行事と同じぐらいの役割を果たすことができるのです。2024年度入学者から36人学級となることで、より充実した授業を展開できることに期待しています。

子どもにとって、小学校受験は終着点ではありません。保護者の皆様には、無理に引っ張る機関車ではなく、後ろから押してあげるような機関車であってほしいと考えています。無理をさせるような受験勉強ではなく、これから先の長い人生を自分で歩いていける力を身につけられるような経験を、たくさんさせてあげてください。

取材協力

東京女学館小学校

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