開智のぞみ小学校
開智のぞみ小「学力の土台を創る学び」 ~「なぜ?」を大切にした3つの学び方でバランスよく学習~
開智のぞみ小学校では、探究型・習得型・反復型という3つの学び方でバランスよく学習し、子どもたちが持つ無限の可能性を伸ばしていきます。国際バカロレアのプログラムを取り入れながら学力の土台を創る教育の特色について、4学年主任の竹川理和先生にお話を聞き、4年生の授業を取材しました。
4年生の授業を取材
4学年主任・指導部 竹川理和先生
開智のぞみ小学校 4学年主任・指導部 竹川理和先生のお話
探究型の学びで新しい智を創造
本校では、「探究型の学び」「習得型の学び」「反復型の学び」をバランスよく取り入れて授業を行っています。各教科の学びは、様々な疑問を子どもたち自身で解決していく探究からスタートして、習得や反復の学びへとつなげていきます。国語や算数だけでなく、体育の授業なども同様です。例えば、4年生が前転を学ぶときもバカロレア*の概念を使います。得意な子たちの前転を見て、共通点を探します。算数で面積を求めるときに公式を使うように、前転をみんなができるようになるための工夫ややり方のようなものがあるはずです。算数の公式を例に挙げて、前転の公式にあたるものを見つけてみようと説明します。前転のフォームを比較する際にはiPadも活用し、動画を撮影してその場でチェックしました。答えを見つけて終わりではなく、それを他のことでも使えないか考えたり、活用していくことが大切です。疑問や使い方などは、子どもたちが自分で見つけることが大前提となっています。
*国際バカロレア(IB)は、国際バカロレア機構によって運営されている世界標準の教育プログラム。開智のぞみ小学校では、開校当初より初等教育プログラム(PYP)のカリキュラムを導入し、教育実践が認められ2018年3月にIBの認定校として承認されました。
昼の学習や自学プリントで算数の反復学習
計算力や語彙力を定着させるためには、繰り返し学習も大切です。算数を例に挙げると、昼休みの後には「昼の学習」の時間を設けて、算数の反復学習を行っています。算数のプリントを使って、習得度別に繰り返し学習する時間です。授業の最初にも基礎学習を行い、さらに勉強したい子は放課後に授業とは問題を変えて学習できる体制も整えています。またテスト前になると、子どもたちは自分で欲しいプリントをもらい、家で自習し、定着を図ります。単元ごとに行っているテストも、自分のペースで納得できるまで何回でも受けられます。
解き方がわからないときは、自分から質問しに来れば教えますが、できていないからといって教員側から一方的に教えることはしていません。こちらから教えてあげるのは簡単ですが、それではすぐに忘れてしまうことが多いのです。自分から質問してくる子は必要だから聞くので、しっかりと定着します。1度では覚えられないときもありますが、そのようなときはもう1度聞きに来ます。ですから、自分から聞きに来てほしいのです。わからないのに質問しに来ない子がいても、しばらくは様子を見ます。社会で生活していく中で、人を助けてあげることも大切ですが、自分が困ったときに「助けてください」と言えることも大切です。大人になってから「助けて」と言えないととても苦しい状況になるので、保護者にもご理解いただき、しばらくは様子を見ます。それでも来ないときには、こちらから声をかけますが、「次は自分から言った方が早く解決するね」と助言をします。
探究学習の一環としてフィールドワークを実施
探究学習の一環として、探究のテーマに沿ってフィールドワークに行っています。4年生は10月に、浜松へ行きました。「ものづくりは人々をつなぐ」というテーマで、楽器博物館、スズキ歴史館、浜松城などを見学。静岡濾布(しずおかろふ)の工場では、浜松で伝統的に続けられている染め方について学び、和紙を使ったタオルの染め物体験をしました。事前学習では、ものを作る人と使う人の関わりや共通点、作る人の責任などについて学んでいます。子どもたちは話し合うことが好きなので、グループワークにもあまり抵抗はないようです。ものづくりに関しては、少し難しいですがFW後にCSR(企業の社会的責任)なども調べて共通点について話し合いました。環境問題に取り組む企業が多いが使う側に責任はないのか、環境には何が含まれているのかなどを話し合っていくと、いろいろな意見が出てとても盛り上がります。誰かの意見に対して、「それは変だよ」などのネガティブな言葉は出ないので、よい雰囲気で話し合いができているのだと思います。
楽器博物館
スズキ歴史館
浜松城
静岡濾布の工場
授業や学校生活にiPadを活用
本校では、iPadを1人1台利用する環境を整えるために、2018年度から順次導入を進めて、2019年度は3年生以上がiPadを使用しています。基本的には授業中のみの使用で、休み時間には使わないことになっています。しかし最近、クラス通信を作りたいという子どもたちが、写真を撮ったりするために休み時間にも使いたいという企画書を出しました。「振り返りに役立つから、クラス通信を作りたい」というのです。「クラス通信による振り返りをどのように活かすのですか?」というコメントを教員から返しました。文章だけでは伝えるのは難しいと思った子どもたちは、次は動画でアピールするか、直接話しにいくか、話し合っています。このような交渉の場面は、社会に出たらよくあることです。大人の世界でよくあることを、子どもにもわかりやすくして体験させていくことで、社会とのつながりを学んでいきます。
月に1回の席替えはクラス会議で決定
子ども同士のコミュニケーションも大切なので、月に1回の席替えは子どもたちで話し合って決めています。「仲がよい子とばかり同じグループにならないこと」「得意なことや苦手なことを考えて、授業の中で教え合えるグループになること」という条件で、子どもたちが話し合います。私が担任をしているクラスでは、今月からフリーアドレスになりました。教科ごとに苦手な子や得意な子が変わってくるので、授業ごとに違う席の方がよいのではないかということになったようです。授業ごとにメンバーが変わることで、色々な友だちと接する機会が増えて、よい関係を作ることができます。やってみてフリーアドレスの方がよければ、取り入れようかなと他のクラスの子どもたちも考えています。
4年生の授業を取材
児童が主体的に学ぶアクティブラーニング型の授業
同校には、「ホーム」(各学年5~6名で構成される異学年学級)と「クラス」(同学年学級)という2種類の教室があります。朝の会やランチタイム、帰りの会などは「ホーム」で過ごし、授業のときは「クラス」へ移動。2つの集団に所属することで、多くの人間関係が生まれ、より豊かな学校生活と、より深く充実した学びが両立できます。
今回は4年生のクラスで行われていた、「算数」「国語」「探究」の授業を取材しました。
算数
算数は、分数の足し算について「1/2+1/4=2/6はあっていますか?」というテーマで授業が進められていました。子どもたちはノートに、4等分にした円の半分を塗りつぶすという作業をしています。先生から「どこを塗りましたか?」と聞かれると、「下半分」「左半分」「右下と左上」など、それぞれが塗った部分を発表。通分を学ぶ過程で、4等分にした円を使って1/2と2/4の共通点を探しているところでした。つまり、分数を視覚的にとらえ理解を深める、すなわち探究をしています。
国語
国語の授業では、「同」という漢字を例に、漢字辞典の使い方を学んでいました。2~4人が1つのグループになり、それぞれの漢字辞典で「同」がどこに載っているか探します。見つけられた子は、まだ見つけられていない子に教えてあげます。探していく中で、「同」という字は6画なのに、3画のページにあったのはなぜかという疑問が出てきました。そこから、部首について学んでいきます。
探究
探究の時間は、教科の枠を超えたテーマに沿って進められます。テーマは、国際バカロレアで定められている世界共通のものです。この日は、「なぜ気持ちに違いが出るの?」というテーマで、個性や一人ひとりの違いについて学んでいました。ジェスチャーゲームのようなことを行い、先生が「私はウサギ」「私は王子」などのお題を出すと、各グループから2人ずつ、それぞれが思うウサギや王子のジェスチャーをします。他の人の表現を見ないようにして、自分なりの表現をすることが大切です。2人の表現を比べるために、グループのメンバーがiPadで撮影します。「王子」などのお題は少し難しかったようですが、ジェスチャーをする2人は戸惑いながらも、それぞれが思う「王子」を表現。同じテーマでもこれまでの経験や考え方の違いによってポーズが変わることを学んでいました。子どもたちは「正解が1つでない課題」に対して、しっかりと自分で考えて取り組んでいました。