関東学院六浦小学校
テーマを自分で選んで探究する「私のポケット」、プレ版を2年生に導入
関東学院六浦小学校は、2019年~2023年の5年計画で「六浦小モデル19-23プラン」を進めています。一人ひとりの個性が伸ばせる教育を目指して、「私のパレット」「私のポケット」「私のドア」と名付けた3つのプロジェクトを試行中。2021年度には、これまで3年生から行っていた「私のポケット」(総合的な学習の時間)を2年生でも実施しています。2年生に導入した「プレポケット」について、「私のポケット」担当の阿部真基先生にお話を聞きました。
「私のポケット」(総合的な学習の時間)担当 阿部真基先生のお話
「私のポケット」(総合的な学習の時間)担当 阿部真基先生のお話
- 2年生で「プレポケット」がスタート
- 好きなことを生活に結びつけることへの期待
- 探究する中で経験を積み重ねることが大切
- 「私のポケット」(総合的な学習の時間・3年生)を取材
- 3年生の児童3人にインタビュー
- 6年生の児童2人にインタビュー
「私のポケット」の研究テーマと感想
テーマ:「深海魚」(3年生・男子)
テーマ:「関東水族館」(3年生・男子)
テーマ:「犬と仲良くなる」(3年生・女子)
5年生のときに行った「私のポケット」の研究テーマと感想
テーマ:「卵を使ったスイーツ作り」(6年生・女子)
テーマ:「マナー」(6年生・女子)
「私のポケット」担当 阿部真基先生
「私のポケット」(総合的な学習の時間)担当 阿部真基先生のお話
2年生で「プレポケット」がスタート
教科という枠を越えて、子どもたちが本当にやりたいことのために時間や設備を確保して、思いきり追及していくのが「私のポケット」です。これまでは、3年生からスタートしていました。しかし、3年生から急に「自分の好きなことを調べていいんだよ」と言っても、なかなか思いつかなかったり、テーマの幅が広がらないという課題がありました。そこで、2年生のうちに同じような流れを一通り体験できないかと考えて、今年の年明けぐらいからスタートさせたのが約3ヶ月間のプレポケットです。3年生からのポケットは、どんなことを調べたいか、どんな風に調べるかなどを決めて、企画書を書くことから始めます。プレポケットも同じように、好きなこと、調べたいことを考えて企画書を書くことから始めました。3年生と同じ流れを体験して慣れることで、「こんなテーマでもいいんだよ」という幅を知ってもらう機会にもなりました。
とはいえ、まだ2年生なので、テーマがフリーだとなかなか決められなかったり、テーマが浅くなってしまうと考え、1回目はメンコやコマなどの「昔の遊び」、2回目は「生き物」という大きなテーマを決めて、その中からやりたいことを考えるようにしました。このプログラム本来の目的としては、テーマに制限はない方がよいのですが、フリーにすれば誰もが自由に動けるというわけではありません。勉強が苦手な子が果敢に動き出したかと思えば、先生の言うことを守れる子がなかなか最初の一歩を踏み出せなかったりと、子どもによって様々です。ですから2年生には、テーマ以外にも、ライブラリーの本で調べる、発表は1枚のレポートにまとめるなどの制約をつけました。実際に始めてみると、「昔の遊び」だけでなく、「今の遊び」について調べたいという意見も出たので、枠を広げるなどの修正をした部分もあります。そのような中で、「遊び」の中だったらこれを調べてみたい、「生き物」の中だったらこれが好きなどとそれぞれが考えて、企画書を書いて、実際に調べてまとめて、発表を行うところまで体験できました。
とはいえ、まだ2年生なので、テーマがフリーだとなかなか決められなかったり、テーマが浅くなってしまうと考え、1回目はメンコやコマなどの「昔の遊び」、2回目は「生き物」という大きなテーマを決めて、その中からやりたいことを考えるようにしました。このプログラム本来の目的としては、テーマに制限はない方がよいのですが、フリーにすれば誰もが自由に動けるというわけではありません。勉強が苦手な子が果敢に動き出したかと思えば、先生の言うことを守れる子がなかなか最初の一歩を踏み出せなかったりと、子どもによって様々です。ですから2年生には、テーマ以外にも、ライブラリーの本で調べる、発表は1枚のレポートにまとめるなどの制約をつけました。実際に始めてみると、「昔の遊び」だけでなく、「今の遊び」について調べたいという意見も出たので、枠を広げるなどの修正をした部分もあります。そのような中で、「遊び」の中だったらこれを調べてみたい、「生き物」の中だったらこれが好きなどとそれぞれが考えて、企画書を書いて、実際に調べてまとめて、発表を行うところまで体験できました。
好きなことを生活に結びつけることへの期待
プレポケットの大きな目的は、自分で選ぶことを体験し、探究サイクルに慣れることです。自分の中に何があるのか内省したり、友達が調べている様子を見て「あんな調べ方もいいな」などと感じることが、探究活動を行うための手札になります。そういった手札を増やしておけば、3年生以降の探究活動が進めやすくなると考えました。実際に2つのテーマで探究サイクルを回したことで、子どもたちの手札を少し増やすことができました。
2年生のときに自分で動いてみて、すでに手札を持って3年生になった子たちは、これまでの3年生よりテーマも決めやすかったと、担当の教員も評価しています。例えば、2年生の途中から犬を飼い始めた子は、プレポケットでは「世界の犬を調べる」というテーマで探究していました。3年生の今は、「犬と仲良くする方法」へとテーマを深めています。犬のことは好きなのに、よく噛まれたり、宿題を破られたりするので、どんな風に関わったらいいのか知りたくなり、このテーマにしたそうです。このように、学年が上がるにつれて、好きなことを生活に結びつけたり、社会と結びつけたりして、ステップアップしてくれることに期待しています。
2年生のときに自分で動いてみて、すでに手札を持って3年生になった子たちは、これまでの3年生よりテーマも決めやすかったと、担当の教員も評価しています。例えば、2年生の途中から犬を飼い始めた子は、プレポケットでは「世界の犬を調べる」というテーマで探究していました。3年生の今は、「犬と仲良くする方法」へとテーマを深めています。犬のことは好きなのに、よく噛まれたり、宿題を破られたりするので、どんな風に関わったらいいのか知りたくなり、このテーマにしたそうです。このように、学年が上がるにつれて、好きなことを生活に結びつけたり、社会と結びつけたりして、ステップアップしてくれることに期待しています。
探究する中で経験を積み重ねることが大切
ポケットの時間は、一斉に足並みを揃えなくてもいい時間です。なかなかテーマが決まらない子は、その子のペースに合わせて待ってあげます。しかし、ただ待つだけではなく、対話をしながら種を蒔いてあげることも必要だと考えています。教員が「こんなの一緒にやってみない?」と誘ってみて、やり始めたら「意外と面白いな」と感じることもあるからです。そのような機会を増やすことも、探究の1つだと思います。
ポケットは、数字で表せるような成果を求めないという考えがベースにあるので、不安に思う保護者もいるかもしれません。しかし、何かに没頭する機会があれば、「私はこれが好きなんだ」という気づきにつながり、それが自分のものになるのです。その経験により、他のことにも自信がつきます。子どもはいつ芽吹くかわかりません。何かにはっとした瞬間に、気がつくかもしれません。やってみて何か違うと感じたり、飽きてしまうのも経験の1つです。ですから、無駄なことはありません。思いつかない時間も、その子にとっては必要な時間なのです。ポケットの活動では、自分が何によって形づくられてきたかを振り返り、自分が何に惹かれているか気づくことが大切なのです。
ポケットは、数字で表せるような成果を求めないという考えがベースにあるので、不安に思う保護者もいるかもしれません。しかし、何かに没頭する機会があれば、「私はこれが好きなんだ」という気づきにつながり、それが自分のものになるのです。その経験により、他のことにも自信がつきます。子どもはいつ芽吹くかわかりません。何かにはっとした瞬間に、気がつくかもしれません。やってみて何か違うと感じたり、飽きてしまうのも経験の1つです。ですから、無駄なことはありません。思いつかない時間も、その子にとっては必要な時間なのです。ポケットの活動では、自分が何によって形づくられてきたかを振り返り、自分が何に惹かれているか気づくことが大切なのです。
「私のポケット」(総合的な学習の時間・3年生)を取材
3年生の授業では、その日にやることをノートに書いて先生にチェックしてもらうことから始まります。チェックが済んだら、教室、グラウンド、ライブラリーなど、それぞれの活動場所へ移動。わかったことをメモして、最後にその日にやったことを振り返ります。
教室に残って研究する子は、iPadを使った調べ学習をしていました。ライブラリーでは、それぞれのテーマについて図鑑などで調べています。生き物について調べている子でも、イルカ、タヌキ、ワニなど、テーマは様々です。犬について調べている子は、「働く犬(盲導犬、警察犬など)にどうやったらなれるのか」というテーマで調べている子や、「犬と仲良くする方法」について調べている子もいました。
グラウンドでは、リトルリーグでピッチャーとして活動している子が黙々と、カーブの投げ方を研究していました。友達と一緒に研究している子もいれば、一人で研究している子もいます。授業時間にどこでどのように活動するか、すべて自分で決めて探究することができるのがポケットの特色です。
教室に残って研究する子は、iPadを使った調べ学習をしていました。ライブラリーでは、それぞれのテーマについて図鑑などで調べています。生き物について調べている子でも、イルカ、タヌキ、ワニなど、テーマは様々です。犬について調べている子は、「働く犬(盲導犬、警察犬など)にどうやったらなれるのか」というテーマで調べている子や、「犬と仲良くする方法」について調べている子もいました。
グラウンドでは、リトルリーグでピッチャーとして活動している子が黙々と、カーブの投げ方を研究していました。友達と一緒に研究している子もいれば、一人で研究している子もいます。授業時間にどこでどのように活動するか、すべて自分で決めて探究することができるのがポケットの特色です。
3年生の児童3人にインタビュー
「私のポケット」の研究テーマと感想
テーマ:「深海魚」(3年生・男子)
「前から深海魚が好きで、いろいろな図鑑を読んだりして興味を持っていました。深海魚の中でも、特にダイオウグソクムシが好きです。この学校はポケットの授業があると知って、深海魚について調べたいと思っていました。ダイオウグソクムシの餌や卵を産む時期、形はダンゴムシに似ているけれど丸まらないことなど、いろいろなことを知ることができて楽しいです。」
テーマ:「関東水族館」(3年生・男子)
「友達と一緒に学校に水族館を作りたいので、今は魚の姿について調べています。友達と学校の前の川(汽水域)で魚を釣ってきたら、学校にある水槽で飼って、みんなが笑顔になる水族館を作りたいです。川ではクロダイなども釣れます。インターネットで調べていると、昔にいた魚の化石があることを知ったり、泳ぎ方の違いなどを知ることができるので楽しいです。最初は、野球の投げ方をテーマにしようと思いましたが、それだと自分だけの研究になるので、他の子と一緒に研究できるテーマの方がいいと思いました。」
テーマ:「犬と仲良くなる」(3年生・女子)
「毎朝、犬に噛まれて起こされるのが痛いので、犬と仲良くなるために犬の行動観察をしています。観察しながら、どんな気持ちか考えるのが楽しいです。例えば、しっぽを振っているときは喜んでいて、『うーっ』と鳴いているときは怒っていると思います。もっとたくさん観察して、犬と仲良くなりたいです。」
「前から深海魚が好きで、いろいろな図鑑を読んだりして興味を持っていました。深海魚の中でも、特にダイオウグソクムシが好きです。この学校はポケットの授業があると知って、深海魚について調べたいと思っていました。ダイオウグソクムシの餌や卵を産む時期、形はダンゴムシに似ているけれど丸まらないことなど、いろいろなことを知ることができて楽しいです。」
テーマ:「関東水族館」(3年生・男子)
「友達と一緒に学校に水族館を作りたいので、今は魚の姿について調べています。友達と学校の前の川(汽水域)で魚を釣ってきたら、学校にある水槽で飼って、みんなが笑顔になる水族館を作りたいです。川ではクロダイなども釣れます。インターネットで調べていると、昔にいた魚の化石があることを知ったり、泳ぎ方の違いなどを知ることができるので楽しいです。最初は、野球の投げ方をテーマにしようと思いましたが、それだと自分だけの研究になるので、他の子と一緒に研究できるテーマの方がいいと思いました。」
テーマ:「犬と仲良くなる」(3年生・女子)
「毎朝、犬に噛まれて起こされるのが痛いので、犬と仲良くなるために犬の行動観察をしています。観察しながら、どんな気持ちか考えるのが楽しいです。例えば、しっぽを振っているときは喜んでいて、『うーっ』と鳴いているときは怒っていると思います。もっとたくさん観察して、犬と仲良くなりたいです。」
6年生の児童2人にインタビュー
5年生のときに行った「私のポケット」の研究テーマと感想
テーマ:「卵を使ったスイーツ作り」(6年生・女子)
「スイーツはどうして卵を使っているものが多いのかなと思って、バスクチーズケーキを作って卵の効果や役割を調べました。卵を使うと、食感がフワフワになり、味が濃厚になります。材料を入れる順番が大切で、分量もきちんと計らないと失敗することがわかりました。将来はパティシエになりたいと思っているので、ポケットの時間に少しだけ夢が叶ったので楽しかったです。お父さんとお母さんに食べてもらい、美味しいと言ってもらえたことも嬉しかったです。次は、難しそうですが、シュークリームに挑戦してみたいと思っています。」
テーマ:「マナー」(6年生・女子)
「マナーをテーマにした理由は、本でマナー検定があることを知り、試しに過去問を解いてみたら楽しかったからです。お箸のマナーは、自分が思っていた以上に、やってはいけない使い方が多くありました。電車に乗るときは、リュックサックを背負ったままだと通路の邪魔になることも知りました。身の回りの整理整頓もマナーですが、私は整理整頓が苦手です。ロッカーや机の中などがぐちゃぐちゃだったので、それを片付ける前と後の写真を撮って記録しました。マナーについて調べたことは、どれも実践できます。マナーを守っていると1日が気持ちよく過ごせるので、調べてよかったです。マナー検定の試験も受けてみたいと思ったので、申し込みました。」
「スイーツはどうして卵を使っているものが多いのかなと思って、バスクチーズケーキを作って卵の効果や役割を調べました。卵を使うと、食感がフワフワになり、味が濃厚になります。材料を入れる順番が大切で、分量もきちんと計らないと失敗することがわかりました。将来はパティシエになりたいと思っているので、ポケットの時間に少しだけ夢が叶ったので楽しかったです。お父さんとお母さんに食べてもらい、美味しいと言ってもらえたことも嬉しかったです。次は、難しそうですが、シュークリームに挑戦してみたいと思っています。」
テーマ:「マナー」(6年生・女子)
「マナーをテーマにした理由は、本でマナー検定があることを知り、試しに過去問を解いてみたら楽しかったからです。お箸のマナーは、自分が思っていた以上に、やってはいけない使い方が多くありました。電車に乗るときは、リュックサックを背負ったままだと通路の邪魔になることも知りました。身の回りの整理整頓もマナーですが、私は整理整頓が苦手です。ロッカーや机の中などがぐちゃぐちゃだったので、それを片付ける前と後の写真を撮って記録しました。マナーについて調べたことは、どれも実践できます。マナーを守っていると1日が気持ちよく過ごせるので、調べてよかったです。マナー検定の試験も受けてみたいと思ったので、申し込みました。」