取材レポート

雲雀丘学園小学校

「孝道」から「考動」へ。自ら考え行動する力を育む新しい雲雀丘の教育。

雲雀丘学園の創立者である故鳥井信治郎氏の口ぐせは「親孝行な人はどんなことでもりっぱにできます」。その思いのもと、雲雀丘学園小学校では「孝道」を教育理念に人間教育を実践してきました。2024年度からはこの理念を一歩進め、子どもたちが自ら考え行動する「考動」とし、その力を育むための新たな取り組みを展開します。加えて、ここ数年コロナ禍のため実施できていなかった異学年交流を深め、また臨海学舎の遠泳も再開する予定です。新たな年度に向けての意気込みを、入試対策部長である小田剛士先生に語っていただきました。

雲雀丘学園小学校 入試対策部長 小田剛士先生のお話
子ども主体で進める探究活動を導入
子ども・保護者・教員でめいっぱい活動する『ひばりデー』を新設
自分から勉強に取り組める子を育てる新補習体制
英語にひたる一日を過ごせるグローバル研修
他者への優しさを培うきょうだい学級
達成感を得られる様々な行事が再開
取材を終えて
入試対策部長 小田剛士先生

入試対策部長 小田剛士先生

雲雀丘学園小学校 入試対策部長 小田剛士先生のお話

子ども主体で進める探究活動を導入

雲雀丘学園小学校では2024年度から『考動』を教育理念に掲げ、子ども自らが学ぼうとする意欲、人と協働して作り上げる力、未来の変化に立ち向かう力の3つを育てる試みを展開します。そのひとつが、子どもたちが主体となって行う探究活動。これは小学3年生から週1時間設定されている総合的な学習の時間を使って行うそうです。具体的な取り組みについて、小田先生は次のように説明します。

「基本的にはテーマも活動内容も教員が設定せず、子どもたちにすべて任せ、考えてもらう予定です。しかし、いきなりお任せにすると、どのように取り組んでいいか子どもたちも分からない。そこで、まず3年生ではひばりの里を使って、興味や疑問の見つけ方、そしてそれを調べるための方法・資料のまとめ方など、探究の基礎となる方法を学びます。4年生の前半ではSDGsをテーマに、引き続き探究の方法を身につける学びを実施。4年生後半以降は子どもたち主導で進めていく予定です」。

興味や疑問を見つけにくい子には教員からも様々な視点を紹介し、それぞれにどこに興味や疑問を持って深めていきたいかを投げかけていくことで対応したいと小田先生。1対1の指導の時間をより多く取れるように、1学年を6グループに分け、それを担任+追加教員2名の教員6~7名で見る体制も整えました。

この探究活動の最終目標とするのは、学校生活を子どもたち自身で考えて変えていくこと。5年生では自分たちで作る修学旅行を実現できないかと考えているそうです。

「自分たちで修学旅行の行き先やプランを考えて、実際に行くことができればと考えています。当学園の中学校で既に行っている非常に実りの多い取り組みなので、ぜひ小学校でも実現したいですね。他にも運動会や卒業式なども、自分たちで内容を考えてもらいたいです。自分たちがしたいこと、それを叶えるにはどうしたら良いかを考える練習になりますし、自分たちで学校生活を変えていけるようになったら、より学校生活が楽しくなるでしょう。色々な職業の方を招いてのキャリア学習も取り入れる予定ですが、基本は子ども達が考える時間と機会を作っていきます」と小田先生は語ります。

子ども・保護者・教員でめいっぱい活動する『ひばりデー』を新設

もうひとつの新たな取り組みが、月1回土曜日に開催するひばりデーです。今まで同校では、月2回の土曜日に補習日を設け、日ごろの勉強で足りない部分を補うための指導を行ってきました。しかし、2024年度からは土曜日の補習は廃止し、代わりに「ひばりデー」を新設することにしました。ひばりデーでするのは、学校を使って教員と一緒に遊ぶこと。自由参加形式で保護者の参加も大歓迎なのだとか。

「本校は私学なので、遠くから通学している児童が多いんです。近所に一緒に遊ぶ友達がいないという声もよく聞きます。そこで、教員と子どもと保護者で色んなことを体験できる日を作ろうと。初回は学校でかくれんぼをします。夏はプールに入るのもいいですね」と小田先生は笑顔を見せます。

ひばりデーを通して、子ども達どうしの絆はもちろん、保護者どうし、そして保護者と教員の絆も深めたいと小田先生は続けます。

「本校の一番の魅力は教員の人柄の良さ。学校説明会のアンケートでも教員の笑顔や子ども達への声掛けが良かったとよく書いていただいています。ひばりデーで教員の参観や懇談以外での顔を見てもらい、たくさんお話をさせていただく中で、教員と保護者の絆も深めていきたいです。教員と保護者がよい関係を築いて同じ方向を向くことが、子ども達の成長には不可欠ですから」(小田先生)。

自分から勉強に取り組める子を育てる新補習体制

雲雀丘学園小学校では、ひばりデーの導入に伴い、土曜日に設けていた補習を毎週月曜日の放課後に実施することにしました。「勉強についていこうとがんばっている子や、勉強に向かうのにこちらが背中を押してあげないといけないと感じる子」を対象に少人数制で行う予定だとか。

補習での目標は、学習習慣を身につけることだと小田先生。

「勉強には分かるから楽しくなり、やりたくなるという面もあります。その『分かる』の部分を補習で作っていきたいと考えています。毎週実施なので、その週の学習内容の定着度を見て、週ごとに対象者を変えていくこともできます。本校では内部進学で中学に入学する子も多く、中学校長からは与えられた勉強だけをする子ではなく、自分でどういう勉強をしたら良いかを考えらえる子がほしいと言われています。そのような姿勢を身につけるのは難しいことですが、ご家庭とも力を合わせながら新たな補習体制のもと、前向きに勉強に取り組める子を育てていきます」(小田先生)。

英語にひたる一日を過ごせるグローバル研修

雲雀丘学園小学校では、数年に渡り「雲雀丘だからできる学び」をキャッチフレーズに、教科学習を改革。どの教員が担当しても、その教科の学びの楽しみを得られる指導方法を確立することに尽力してきました。

その中で、2024年度は新たな英語の試みとして、3~5年生を対象に様々な国から来たネイティブと丸1日を一緒に過ごすグローバル研修の導入を決定。習熟度別のグループに分け、使う単語のレベルなどをグループごとに変えることで、同校に多いインターナショナルスクール出身の子どもたちの「培ってきた英語力をキープしたい」という思いにも応えられる内容を目指すそうです。

「グループは本人の希望や英語の習熟度に合わせて組む予定です。どのような活動を行うかは今打ち合わせ中ですが、英語にひたれる1日を提供できるよう計画しています」(小田先生)。

他者への優しさを培うきょうだい学級

コロナ禍で中止していた活動や行事も2024年度は全面的に復活します。特に小田先生が再開を楽しみにしているのがきょうだい学級集会だとか。きょうだい学級集会とは異学年交流のことで、雲雀丘学園小学校では1年と6年、2年と4年、3年と5年がペアを組んで活動を行います。

きょうだい学級で毎週1回、朝に遊ぶ時間があるほか、春には徒歩遠足も実施。今は毎朝6年生が1年生の教室に行って荷物の整理を手伝った後、一緒に遊んでいるのだとか。特にまだ通学に慣れない1年生にとって、きょうだい学級でのつながりが与えてくれる安心感は非常に大きいものがあるでしょう。

このように上級生に一緒に遊んでもらう経験を得て、自らが上級生になると自然と同じように行動するようになると小田先生は言います。

「3年生が幼稚園に英語を教えに行く行事があります。3年生が年中さんに英語を教えるのに、どの子も膝をついて年中さんと目線を合わせて話をしていました。教員の誰もそんなことを教えてはいません。なぜそんなことができるのかを考えた時、きっと1・2年生の時にそうしてもらったのだろうと。本校の卒業生はとても優しく、人を受け入れる姿勢ができているねとよく言われるのですが、これもきょうだい学級で得た大きなもの。きょうだい学級には良い経験しかありませんので、これを復活できるのは本当にうれしいです」(小田先生)。

達成感を得られる様々な行事が再開

ほかにも、2024年度は1年間の学びを発表する総合発表会や5年生の臨海学舎での遠泳も再開を予定しています。コロナ禍でできなかったすべての行事が再開することに向けて、小田先生は次のように述べます。

「総合発表会では約1000人の観客の前でひとりずつセリフを言う機会もあります。子ども達は緊張しますが、やり遂げられた時の達成感は非常に大きい。遠泳もそうです。本校では顔を上げた状態の平泳ぎで、1キロメートルを泳ぎます。足のつかない所を泳ぎ続け、浜に戻ってきて足が付いた瞬間の満たされる感じを味わってほしいですね。達成感は自己肯定感を生み、それがいろんなことへの挑戦心を育みます。そして頑張る上級生の姿は下級生たちに目標を与えてくれます。学校教育において、しない方が良い行事はひとつもありません。遠泳は引率の教員を増やすなど安全体制も整えた上で、行います」。

取材を終えて

小田先生の担当教科は算数。算数は教科の中で一番好きな教科に挙げられることも、一番嫌いな教科に挙げられることも多い教科なんだとか。

「算数の授業改革の目標としたのは、一番好かれる教科になること。そのために各学年の算数部の教員が、子ども達が算数で何が好きと感じているかを研究し、そのキーワードを持ち寄って『雲雀丘の算数の授業』の幹を作り、各学年の授業に還元していきました」

小田先生の言葉から、同校では教員同士が連携して改革に取り組む体制が整っていることが伝わってきます。これも、全教員が「どの学年になっても同じ学びの面白さを味わえる授業を作ることが私立学校の務め」という考えを共有しているからこそ。

授業改革の結果、算数ファンが非常に増え、今では授業変更で算数がなくなると子ども達から「えーっ」という声が上がるのだとか。

小田先生は「低学年の算数好きを育むには『できる』ことが大切。とにかく解けたら楽しいんです。それが高学年に近づくにつれて、『なんで?』が分かると楽しくなります。だからこそ公式が出てきたら、それをただ覚えるのではなく、なぜこんな公式になるのかを授業で取り扱います。授業中、子ども達は『なんで?なんで?』ばかり言っていますね。高学年では子ども達主導で進めていって、教員がサポート役に回ることも少なくありません。なんのために勉強するのかを子ども達が理解した上で授業に取り組んでいるから、算数が好きになったのかなと思います」と嬉しそうに語ります。

今回の取材を通して、学校教育の基本となる教科学習を常に改善していくと共に、探究活動やグローバル研修など新たな試みにも果敢に挑戦していく姿勢が雲雀丘学園小学校にはあると感じました。それが1学年4クラス144名という関西の私立小学校でトップクラスの児童数を集められることにつながっているのではないでしょうか。2024年度に新たに始まる試みがどのような成果を見せてくれるのか楽しみでなりません。

取材協力

雲雀丘学園小学校

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FAX:072-759-4427

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