取材レポート

城南学園小学校

チーム城南で「子どもが育つ学校」を目指す

建学の精神「自主自律(強く、正しい)」「清和気品(清く、やさしい)」のもと、実践力のある魅力ある子を多く育ててきた城南学園小学校。同校は、2024年度より新しく校長に就任した太田友子先生のもと、「子どもが育つ学校」を学校経営方針に掲げ、伝統ある教育を進化させます。太田校長は堺市小学校教員、堺市・大阪府教育委員会を経て、堺市の公立小学校校長を勤めるなど、地域教育の充実に尽力してきた方。城南学園では幼稚園の園長を10年務め、この度、小学校校長も兼務することに。幼稚園から小学校までの子どもたちを長年に渡り見守ってきた太田校長の話から、新しい城南学園小学校の教育を紐解きます。

城南学園小学校 校長 太田友子先生のお話
「子どもが育つ学校」を新学校経営方針に据える
私学の強みを活かした「チーム城南」
ロイロノート認定校に大阪の小学校として初選出
日々の学習の定着と探究的活動を2本柱とする時間が誕生
考える愉しさがいっぱいの授業
取材を終えて
校長 太田友子先生

校長 太田友子先生

城南学園小学校 校長 太田友子先生のお話

「子どもが育つ学校」を新学校経営方針に据える

2024年度より「子どもが育つ学校」を学校経営方針に掲げる城南学園小学校。この新たな方針のもと、同校では「学びに向かう力」を育てる教育により力を入れます。

「学びに向かう力」とは、自らが主体となって課題に向き合い、その解決に向けて粘り強く思考したり、他者と共によりよいものを目指したりする力のこと。太田校長は「この力の育成には、子どもたち自身が自分の学びを客観的に評価することが必要」だと指摘します。

「自分の学びを客観視するためには、活動に入る時に活動内容や目的などの見通しを持つこと、活動後には振り返りをすることが不可欠。そこで本校では、授業を含む全教育活動に見通しと振り返りの時間を必ず設けることにしました」。

振り返りでは、その活動で何を学んだか、学んだことをどう活かしていきたいかを文字にまとめてもらうそうです。年長児でも、数を数える単元の振り返りをしてもらうと「10個ずつまとめた方が良かった」などと自分の考えをしっかり書いてくれるのだとか。

「言語化することで認識を新たにし、学びを一段階深めることができます。その積み重ねが学びに向かう力の育成にはとても大切です」と太田校長は指摘します。

見通しと振り返りはある程度時間が必要なので、実は教員にとっては負担が大きい取り組みでもあります。しかし、同校では、子どもたちが自分の人生を切り拓くために必要な力を育むために、学校として真正面から取り組んでいくと太田校長は力強く語ります。

私学の強みを活かした「チーム城南」

2024年度のもうひとつのキーワードが「チーム城南」です。子どもたちが安心して学べる環境を「チーム城南」として作っていきたいと太田校長。

「同じ方向を向いた教育をどの学年でも受けられることで、6年後に大きな違いが出るでしょう。だからこそ、教員全員が学びに向かう力を育むという同じ方向を見て、子どもたちに同じ関わり方ができるようにしようと、教員間の考えの共有に力を入れています。話し合いを重ねることで、今は広報担当だけではなく、全教員が新しい学校方針についてしっかりと語れるようになりました。私学で教員の異動がないことも『チーム城南』を作る上で大きな強みです」。

続けて、子どもたちが安心して学べる環境を作るために、教員が一人ひとりの子どもたちの声を今まで以上に丁寧に聴いていくと太田校長は話します。

「私たち大人は子どものことを分かっていると思いがちです。しかし、どんな小さな子相手でもその子のことを完全に分かっているわけではないと思います。そのことを理解した上で、一人ひとりをしっかり観察し、対応していこうと教員には伝えています。振り返りを通して、同じ活動でも『うまくできた』『面白くなかった』など個々の感想が違うことも知ることができるでしょう。それらの声を受け止めて教育に反映し、子どもと一緒に学校を作っていきます」。

このように自分の思いをしっかりと受け止めてもらい、それにより教育が変わる様を感じられることは、子どもたちの安心感と自信にもつながることでしょう。

太田校長は「子どもは周りにいる大人のものの見方や関わり方、考え方から学んでいく部分が大きいので、教員に当たり外れがあってはいけません。教員の意識と関わり方を揃えることで、『チーム城南』として子どもたちが安心できる環境を提供していきます」と話します。

ロイロノート認定校に大阪の小学校として初選出

城南学園小学校は、1年生から1人1台端末制を導入するなど、ICT機器を使う教育を積極的に取り入れていることでも有名です。日本で1日220万人の小中高生が使用しているクラウド型授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」も導入しており、全学年の授業で活用。同アプリを活用した授業展開の幅広さが評価され、2024年4月にはロイロ認定校にも選出されました。これは大阪の小学校としては初のこと。

ICT教育は、子どもたちの学びに向かう力の育成を支える大切なツールのひとつでもあります。太田校長に活用例を聞いたところ、次のように返ってきました。

「ロイロノートはボタン1つで皆の意見を画面で共有でき、同じ意見をグループに分けることもできます。学びに向かう力の育成にもとても有用ですが、意見を共有して終わりでは意味がありません。意見共有から学んだことをどう残すかがポイントです。本校では振り返りで言語化することで、より盤石な学びにつなげていきます」。

日々の学習の定着と探究的活動を2本柱とする時間が誕生

子どもたちの効率的な学びのために、城南学園小学校では2023年度より時間割を大きく改訂し、2024年度からは1コマの授業時間を標準的な45分ではなく、40分に設定。短縮した5分を集約し生み出した時間を、様々な活動に充て、「学びに向かう力の育成」を軸に内容をアップデートしました。

「見通しと振り返りの時間の充実のために朝の会と終わりの会の時間を拡大したほか、日々の学習の定着を目的として、朝と昼に『Monoxer』、昼に英語を各10分導入しました。『Monoxer』とはAIによる個別最適化学習ができるアプリです。自分の到達度に合わせた計算や漢字の学習を行います。英語では楽しみながら毎日英語に触れることで英語学習への意欲を培えるプログラムを1ヵ月単位で提供します。またキーボード入力を練習する時間も月・火・木の午後に10分ずつ設けました」。

上記の変更に加え、金曜午後に新たに導入したのが20分間の「Jonanっ子 Time」です。この時間は「学びに向かう力」の中で、学年ごとに身につけさせたい力を意識した活動を行う予定だとか。

「例えば、物語を作る『作家の時間』、子どもたち自身が学校生活で必要だと思うことを考え実行していく『係活動活躍の場』などを想定しています。また将来的には、総合的な学習の時間と連動した探究活動も行えればと考えています。「Jonanっ子 Time」でも、見通しと振り返りを大切に進めていきます。この時間を通し、子どもたちの声をしっかり聴き、それを学校運営にも活かしていきたいですね」と太田校長は述べます。

考える愉しさがいっぱいの授業

城南学園小学校は、2024年度の授業のキーワードに「考える愉しさがいっぱい!」を掲げます。「楽しさ」ではなく、「愉しさ」を選んだのには、次の理由があると太田校長は説明します。

「愉しさの部首はりっしんべんで、これは心を意味します。自分の意志があって、初めて得られる学びの面白さを授業では追求したいと思って、この字を当てました。ただやり方を教える・答えを出せば良いという授業ではなく、子どもたちに疑問を投げかけ考えさせる・発見させるスタイルもどんどん取り入れていきます」。

太田校長が以前堺市の小学校で算数教育にそのスタイルを取り入れた時には、子どもたちから「算数が好きになった」「自分は今まで考えようとしていなかった」などの声が聞かれたそう。太田校長は「自分で考える愉しさに気付いたんだと思います。結果として、学力テストの点数も非常に伸びたんですよ」と振り返ります。

最後に、太田校長は次のように語ってくれました。

「愉しいは、子どもたちだけでなく、教員にも大切。授業も仕事も愉しもうと伝えています。幸い、本校の教員は皆やる気がとてもあって、校長就任直後から色んな取り組みの提案をしています。今日は低学年だけのたてわり活動を行っているのですが、この活動も教員の提案で実施したものなんですよ。『チーム城南』として、同じ方向を向いて子どもが育つ学校を作っていきます」。

取材を終えて

城南学園小学校では、人間力を磨く学びのひとつとして、礼儀作法の指導に力を入れています。日々の指導のほか、専門の講師を招いての礼法の時間も、1年生から年8回を設定。和室での振る舞いも学ぶことができるよう、校内には和室も備えられています。

太田校長は「本校の建学の精神の1つは『清和気品』。美しい振る舞いも大切にしています。お客様がいらっしゃった時に、子どもたちが自然と立ち止まり、きちんと向き直って礼をしてから去っていく姿を見るととても美しく、嬉しく思います。まだ入学したての1年生も、上級生のその姿を見て、段々と真似するようになるんですよ」と笑顔を見せます。

今まで培ってきた伝統の教育や、中学受験にのぞむ子が多い進学校ならではの確かな学力を育む教育は、以前同様に大切にしていくと太田校長は話します。そこに、幼稚園と小学校で長く教育に携わってきた太田校長の経験に基づく新たな教育が加わり、子どもたちに蒔かれる種もより多くなることでしょう。その種が未来で花開く日が楽しみでなりません。

取材協力

城南学園小学校

〒546-0013 大阪府大阪市東住吉区湯里6-4-26   地図

TEL:06-6702-5007

FAX:06-6702-5330

URL:https://www.jonan.ac.jp/es

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