取材レポート

うつほの杜学園小学校(仮称)

これまでにない新しい学校!世界・地域・自然とつながり未来につながる教育を

山、川、海と自然にあふれている和歌山県田辺市。世界遺産の熊野古道があり、1000年以上の歴史があります。熊野古道エリアは昔から外の人を受け入れる文化が根付いており、地元の人々はあたたかく受け入れてくれます。また、海辺のエリアは、海水浴場、温泉地、レジャー施設などがあります。子育て世代に人気のあるこの場所に、うつほの杜学園小学校が開校予定です。南紀白浜空港から40分、関東からも、関西からも、繋がりやすい場所にあります。昨今、教育移住が増えており、環境を変えて子どもを育てたい、子どもが小さいうちは自然あふれる地域コミュニティの中で子育てを、周りにこういった学校がないので教育を受けさせたいと、訪れる保護者が日に日に増えているそうです。コンセプトは『一緒に学ぼう、創ろう、冒険しよう』。世界・地域・自然と繋がり、体験しながら学ぶ『探究型グローカル教育』を目指しています。仙石恭子学園長にお話をうかがいました。

うつほの杜学園 仙石恭子学園長のお話
学校設立に至った背景
『探究型グローカル教育』とは?
特徴のある授業を紹介
みんなに伝えたい熱い思い
今後の受験スケジュール
将来の進路
まとめ

うつほの杜学園 仙石恭子学園長のお話

学校設立に至った背景

仙石恭子学園長は現在、ワインの輸入の仕事をしながら、1児の母として子育てもしています。コロナ禍で学校設立を決意し、4年前に学校設立のプロジェクトを立ち上げ、2025年4月より、うつほの杜学園小学校を開校する予定です。

「和歌山県和歌山市で育ち、東京の大学に進学しました。その時、地方と大都市との教育選択の大きな格差を感じました。在学中に得た『探究的な学び』を、もっと小さい小学校のうちに、学ぶことが大切ではないかと思うようになりました。普段はヨーロッパと繋がる仕事をしており、教育とは違うビジネスをしていますが、コロナ禍がきっかけとなり地元の和歌山に移住しようと考えた所、地方には、未だ教育の選択肢が数少ないことに気がつきました。予測不可能な世の中で、社会が日進月歩で変化を遂げています。リモートワークで働く方も増え、地方へ教育移住する方も増え、世界では教育改革が叫ばれています。そんな中、日本の教育環境はどうだろうか?少子化が進み、公立の小学校ですら統廃合が進んでいるのが現状です。『よし、理想とする学校がないのであれば、ゼロから創ろう!』と一念発起。現在の社会において、子どもが育つ環境や教育に重きを置くことで、社会を変える一躍を担えるのではないかと考え、小学校設立の声を上げた所、51社680名以上から必要資金に相当する寄付が集まりました。」(仙石学園長)

『探究型グローカル教育』とは?

まず、グローカルとは、グローバル(地球規模の視座)と、ローカル(地域のアイデンティティと視座)の両方を持つことを表した言葉です。そこに探究的な学びを加え、人とのコミュニケーションだけでなく、社会や自然など外の環境とも深くつながっていく『関係力』、『探究力』、『想像力』に加え、失敗を恐れず挑戦する『冒険マインド』を学び身につけます。合言葉は、『いっしょに学ぼう、創ろう、冒険しよう』です。さらに、世界・地域・自然、この3つとつながりながら学んでいくため、世界を考える上で英語を言語的に学ぶのはもちろん、まずは日本語をベースとし、第二言語として英語を使いイマージョン教育(英語が飛び交う環境に身を置き、英語を身に付ける言語学習方法)を行います。全てを英語で教育するインターナショナルスクールとは異なります。1年生から英語の授業があり、加えて図工、音楽、体育を英語で行います。インターナショナルな講師も常駐します。

「海外と仕事をする観点から、日本の教育との違いも感じます。ヨーロッパでは、自分の街への地域愛、街のことを一番よく知っていて、伝統・文化を価値と財産に変え、個人のアイデンティティや生きる喜びともつながっています。知識に変え守っています。さらに、教育現場では、インプットだけではなく、アウトプットをする機会がとても多いです。良い点を取り入れながら、本校での授業は、インプットのみならず、アウトプットの機会を増やしバランス良く授業を進めたいと考えています。」(仙石学園長)

特徴のある授業を紹介

【探究プロジェクト】
うつほの杜学園のカリキュラムの一つに、『探究プロジェクト』があります。本校の時間割の午後は、毎日『探究』の時間となっています。最初の探究の問いかけから始まり、児童が主体となって話し合い、現場に赴き体感し、取材、最後はみんなで出した考えをまとめ発表します。これを6週間かけて、1つのプロジェクトとして学習します。年間で6つのプロジェクトを行うことで、必然的にアウトプットの機会が年間で相当数作られることとなります。

【食学】
家庭科の『食』に重きを置いた授業で、地元の方との関わりが多い授業です。週1回行われ、学校のすぐそばにある田んぼで、“米作り”を実践したり、和歌山の発祥である発酵食品の“梅干し”や“醤油”などの発酵食材を造ったりなど、自分達で育て栽培し、収穫、それを使って調理し、食すといった内容を行います。自分達で育て栽培し、収穫、それを使って調理し、食すといった内容を行います。地元の方からは、栽培方法、収穫方法、調理方法を学びます。地域アイデンティティを育む一つの例です。とにかく試してみて、うまく育てられなくて失敗しても、一緒に学んで次に生かす。この体験が、失敗を恐れず挑戦する冒険マインド。高い自己肯定感をはぐくみます。
【うつほ会議】
『うつほ会議』と呼ばれる全校会議があります。週1回行われ、学則がない学校なので、児童と一緒にルールを決め、困ったことがあればみんなで話し合い、解決する時間となっています。一人ひとりの個性が尊重され、自発的に学校での課題を見つけ、解決するために積極的に学校や社会に関わろうとする意識が必要だと考えています(シチズンシップ教育)。珍しい取り組みとして注目を集めています。

「これから入学する児童が中学校に上がるタイミングで、中学校もこの敷地内に開設予定です。小・中9年間の教育を5年と4年に区切り、1年~5年をプライマリー、6年から中3をジュニアと考え、プライマリーでは科目横断的に、ジュニアからは科目別によりアカデミックなカリキュラムを行おうと思っています。」と仙石学園長はおっしゃいました。

みんなに伝えたい熱い思い

地元の方と関わる中で、仙石学園長の思いを伺いました。

「地元では、人口減少、空き家の増加、インバウンドに頼った地方経済のありかたなど、様々な問題を抱えている所、小学校設立の話が持ち上がり、交流人口が増える起爆剤になるのではと熱い期待を寄せています。田辺市、地域の人、学校の3者協定により、地域と共に活性することを目指しています。本来小学校のあるべき機能は、地域も含め『みんなで子どもを育てる』姿です。学校だけでなく、地域の方と行政がみんなで協力して子育て環境を作り上げていかなければなりません。この地域であれば、林業、農業、食品加工業をされている方などにご協力いただいて、その時その時に応じた授業をお手伝いして頂こうと考えています。多種多様な方たちと一緒に立ち上がっていく学校です。どの地域にも必ず“何かの専門家”は沢山います。そういった方々を、本来は学校という場所で繋がり合って、みんなで一緒に子どもを育ていく、昔はどの地域でもやってきたことです。うつほの杜学園を設置するこの場所には地域が子どもを育てる慣習が色濃く残っており、既にお手伝い頂いている方々も含め地元の皆さんは学校が始まることを心待ちにしています。それに加えて、『世界』と関わる教育をしていかなければなりません。少子化が進むこれからの子ども達の未来を考えた時に、『世界』と繋がることは必須となります。世界遺産の熊野古道の地であるこの場所には今世界から多くの訪問者が訪れ、世界との繋がりを実現するには最高の環境です。子ども達には、世界と地域を結び付ける人に育って欲しいと思っています。ゆくゆくは国際バカロレア教育(国際的視野と多文化理解を重視し、幅広い科目を通じて批判的思考と自主学習力を育む教育プログラム)も取り入れた授業カリキュラムにと考えています。」と熱く語られました。

今後の受験スケジュール

【受験について】
現在は学校法人を申請中で和歌山県からの審査待ちです。審査が無事通り次第、秋以降に2回行う予定です。行動観察と面接を重視しています。何より、この学校の理念に共感して、みんなで一緒に子育てをする学校コミュニティを大切にしたいと思っています。

【入学前に英語力は必要ですか?】 英語に関しましては、入学してから一緒に力をつけていこうと考えていますので、これから学習する状態でかまいません。卒業までに英検2級レベルの英語力を身に付けられることを目指しています。ただし英語力だけではなく、海外の人と動じず対等に会話ができることに重きを置いています。

将来の進路

児童達がたどる将来像について伺いました。

「中学校での学習は、中2までに中学校の内容を終え、中3では『ウェルビーイング』をテーマとし、1年間をかけて自分の進路をじっくり考え、マイプロジェクトに取り組んでもらいます。通常であれば、高3で考える内容を一歩早い段階で自分軸を見つけ、高校では、海外、国際バカロレアDP高への接続、県内でも増えている専門的(宇宙探究コース、食と農園科など)で興味深いコースのある学校など、生徒の興味関心に応じて選択し、十人十色の進路を考えて欲しいと思います。大学入試でも、総合選抜型入試が増えているので、自分のことをしっかり考え、伝えられる力をつけて、将来に向かって歩んで欲しいと願っています。」(仙石学園長)

まとめ

壮大なスケールの自然の中にひっそりとたたずむ、うつほの杜学園小学校。開校を間近に控え、仙石学園長は奔走している姿がありました。お話を伺い、実際この学校が開校したら、どんなに素敵な教育になるのだろうとワクワクしました。取材中に、地元の方の飛び入り参加があり、とてもフレンドリーに周辺地域の方の思いを聞くことができました。現代の社会には失われつつある地域の温かみや、気軽に参加できる雰囲気が、まさにこの学校の特徴である、地域一丸となって子ども達を育て、共に学んでいる姿が想像できました。実現できることを楽しみにしています。

8月、9月にサタデースクール・学校説明会(現地、オンライン)を多数開催予定です。サマースクールも開催予定で、すでに50名以上が申し込みをされています。ぜひ一度、学校の魅力を体感するために足を運んで、豊かな自然と、あたたかい地元の方との触れ合いを体験してみて下さい。

取材協力

うつほの杜学園小学校(仮称)

〒646-1417 和歌山県田辺市中辺路町川合1451   地図

TEL:090-4640-1028(事務局)

FAX:-

URL:https://utsuho-academy.com/

うつほの杜学園小学校(仮称)