取材レポート

雲雀丘学園小学校

小学4年生から一人一台のタブレットを配布

独自プログラムの実践により、学力の向上・定着を測ってきた雲雀丘学園小学校。2018年度より、小学4年生に一人一台タブレットを配布し、より充実したICT教育がスタートしました。この新しい取り組みについて、入試対策部長・今井徹先生にお話をお伺いしました。

雲雀丘学園小学校 入試対策部長 今井 徹 先生のお話
入試対策部長 今井 徹 先生

入試対策部長 今井 徹 先生

タブレットを活用した効率的な授業

この一年、授業でタブレットを活用して感じたメリットは、児童全員の意見を瞬時に集約し、その場で共有できることです。

これまでは、紙に書いて提出していました。それを授業終了後に教員がチェックし「良い考え方をしているな」と感じるものがあっても翌日の授業でしか共有できませんでした。しかし、タブレット上で提出してもらうことで瞬時に児童全員の意見を確認・比較することができ、その場で意見をピックアップして紹介することができるようになりました。

タブレット上で取り組む様子をリアルタイムで把握できるので、一人ひとりの理解度をすぐにチェックできます。手が止まっている子がいれば、すぐに声を掛けられます。カードとして提出することで、児童全員がその問題に取り組み、回答を出せているかを確認できるというメリットもあります。

社会見学でもタブレットを持参しました。写真を撮り、その後のまとめ学習で活用しました。小学4年生の消防署見学では、ある子は消防車を撮影し、ある子は救急車を撮影してきました。子どもたちが調べてきたことを、みんなに知らせることができ、後にまとめた新聞にも役に立っています。

提出したカードを、児童たち同士で自由に見ることもできます。これまでなら、このようなまとめ学習は児童各自のノートにまとめていたので、友達が何を書いているのか、その子が発表しなければなかなか知ることができませんでした。しかし、タブレットを使い、カードで提出させることで、画面に全員のまとめ学習が一斉に見えるので、発表が苦手な子どもたちの自分の考えを表現しやすくなりました。

共有したカードに対する意見のやりとりもより活発になりました。他の子の意見を吸収して、それについて考えて、発言するという流れは、今求められているアクティブラーニングの実践にも繋がると考えています。

ほかにも、毎日のモジュール学習「ひばりタイム」における計算問題でも活用しています。毎回15分、タブレット上で算数の計算問題を行うのですが、早い子はどんどん進めていきます。また、苦手な子はじっくり取り組み学力の定着を図ります。タブレットは毎日、自宅に持ち帰るので、家庭学習にも活用できます。長期休暇時に、自宅で取り組んでいる児童もいます。

高まるプレゼン能力

タブレットを日直のスピーチに活用する児童もいます。週末に出かけた先で写真を撮り、詳しくスピーチする児童がいました。また、児童によっては動画を撮って見せるので、今まで以上に朝の会の時間が楽しい時間になっていたようです。タブレットを使ってプレゼンすることで、これまでは人前で話すことが苦手であった児童も「発表することは楽しい。」と感じる児童が増えたような気がします。

社会の授業では、都道府県のCMを作りました。インターネットからさまざまな素材を集め、タブレットで編集し、音楽やナレーションを入れて動画にして作りました。ナレーションひとつとっても、他の児童の声が入らないように校庭で録音したり、動画も自分が説明している所を友達に撮影してもらったりと、各自が工夫をこらして楽しそうに取り組んでいました。

これまでは、我々が素材を提供し、その中から児童たちがどの素材を使うかを選んでいましたが、今はインターネットを使い、自分たちで自由に素材を探し、膨大な情報の中からどれを使うか取捨選択をしています。情報への関心が高くなり、より学習に興味・関心を持つようになったと感じています。

プレゼン作りのカード作りはグループではなく、現在個人で行うことが多いです。グループで行うと、携わらない子が出てくることもあるからです。個人で行うことで、必ず自分でタブレットを触って作る必要がでるので、児童全員のプレゼンスキルが磨かれます。

文部科学大臣賞を受賞したモラル教育

当校にはパソコン教室があり、小学1年生からパソコンの授業を週1回行っています。その一貫として、ネットモラルについての指導も発達段階に合わせ、学校全体で取り組めるカリキュラムを編成しています。知らない人と会話をしている怖さやネットにひそむ危険について身をもって感じられる内容となっています。学校全体でのネットモラルへの取り組みが評価され、2018年度の「ひろげよう情報モラル・セキュリティコンクール」の文部科学大臣賞を受賞することもできました。

手で書くというアナログの部分も大切に

実際にタブレットを使用していると便利ですが、すべてをタブレットで済ませようとは考えていません。やはり“手で書く”ということは学びの上でとても重要です。連絡帳をタブレットで撮り、撮影したものを担任から配信すれば楽ですし、書き間違いもありません。しかし、連絡帳も個々で必要なものが違います。それを考えながら自分で書く。どの授業でもしっかり書く時間を設け、自分の手を動かして書く量や時間は、以前と大きく変わっていません。“手で書く”というアナログの部分も今後も大切にしていきます。

教員全体で取り組む新しい教育

今後の中高等学校の授業でのICT教育を見据え、スタートしたタブレットの一人一台制。これまでの教科学習でタブレットを取り入れてきた経験を生かしつつ、2018年度は教員全体でこの新しい教育に取り組んできました。やはり、学校貸し出しのタブレットと一人一台持つ“教材”としてのタブレットとでは意味合いが違います。教員側の意識も変わり、より良い授業をするためにタブレットをいかに活用するかということを模索し、教員同士のやりとりも活発になりました。

今後も使うことで我々教員も学び、スキルアップしていかなくてはいけません。一人ひとりの教員が、子どもたちが伸びていくための使い方を考え、試行錯誤し、タブレットだからこそできる教育というものを追求していきます。

(取材を終えて)

タブレットによって、児童同士の意見のやりとりが活発になったり、自分で調べてみようとする意欲が高まったりするなど、学びが深くなっていると感じた。また、今井先生の「一人ひとりの教員が、子どもたちが伸びていくための使い方を考え、試行錯誤し、タブレットだからこそできる教育というものを追求していきます」という言葉に象徴されるように、教員側の新しい学び方に取り組む姿勢も変わってきた。
一人一台制の導入は児童・教員双方に刺激を与え、新しいスタイルの学びへとつながっていく。取材を通して、次世代型の学びへの期待がより高まった。

取材協力

雲雀丘学園小学校

〒665-0805 兵庫県宝塚市雲雀丘4-2-1   地図

TEL:072-759-3080

FAX:072-759-4427

URL:https://hibari-els.ed.jp/

雲雀丘学園小学校