帝塚山学院小学校
伝統と新しさを大切に社会に貢献する人を育てる
大正の創立以来、自ら学ぶ子どもの育成をめざす帝塚山学院小学校。その教育理念は変わることなく、新しい時代に応じた教育も積極的に推進しています。同校の教育についてお話をうかがいました。
帝塚山学院小学校 校長 神原 利浩 先生のお話
帝塚山学院小学校 校長 神原 利浩 先生のお話
校長 神原 利浩 先生
帝塚山学院小学校 校長 神原 利浩 先生のお話
時代を超えて生きる「自学主義」
本校では2016年に迎えた創立100周年を大きな節目として、次の100年への新たなスタートを切りました。守るべき伝統は守り、必要な改革は断行して行きます。教育理念の「自学主義」は、もちろん守るべきもの。いつの時代も古びることはありません。
自ら学ぶことを重視する「自学主義」も本校が守るべく伝統の一つ。「自学主義」にもとづく伝統行事も大切にしています。遠泳に挑戦する臨海学舎や、体育大会、音楽会などを通して、自ら努力して困難を乗り越えることや、みんなで力を合わせて最後まで取り組むことを学ぶのです。そのことによって、自己肯定感や思いやりの心などを育てていきます。
グローバル時代は、日本人としてのアイデンティティを育むことも重要になってきます。本校では、各教科で日本の伝統芸能を体験的に学ぶ時間を設定。たとえば、3年生の図工では歌舞伎役者から直接教わって、実際に自分の顔に隈取を描くようなこともしています。5年生の国語では能楽師から能や狂言を教えてもらうなど、子どもたちは伝統文化を学びながら日本人としてのアイデンティティをしっかりと育みます。
自ら学ぶことを重視する「自学主義」も本校が守るべく伝統の一つ。「自学主義」にもとづく伝統行事も大切にしています。遠泳に挑戦する臨海学舎や、体育大会、音楽会などを通して、自ら努力して困難を乗り越えることや、みんなで力を合わせて最後まで取り組むことを学ぶのです。そのことによって、自己肯定感や思いやりの心などを育てていきます。
グローバル時代は、日本人としてのアイデンティティを育むことも重要になってきます。本校では、各教科で日本の伝統芸能を体験的に学ぶ時間を設定。たとえば、3年生の図工では歌舞伎役者から直接教わって、実際に自分の顔に隈取を描くようなこともしています。5年生の国語では能楽師から能や狂言を教えてもらうなど、子どもたちは伝統文化を学びながら日本人としてのアイデンティティをしっかりと育みます。
心を通わせながら学び合う「恊働学習」
伝統の教育とともに、新しい時代に応じた教育も推進。その中心となるのが、2012年より導入した「恊働学習」です。子どもが互いに「心」を通わせ、力を合わせて学んでほしいという願いをこめて、「協働」ではなく、あえてりっしんべんの「恊働」と表しています。子どもたちが自ら学ぶ恊働学習の根本にあるのは、もちろん「自学主義」です。
恊働学習には、ディベートやグループでの探究学習、話し合いなどいろいろな方法があります。各教科で取り入れているのですが、たとえば、算数ではグループで解き方を話し合いをする中で探るようなこともしています。
恊働学習には、ディベートやグループでの探究学習、話し合いなどいろいろな方法があります。各教科で取り入れているのですが、たとえば、算数ではグループで解き方を話し合いをする中で探るようなこともしています。
学びを広める・深める授業
6年生では、算数の「割合」の授業で、ロケットの打ち上げを例題に恊働学習を行いました。「あなたなら、次のAチームとBチームのどちらに打ち上げを依頼しますか?」という問いに対して、まずAチームとBチームそれぞれの打ち上げ成功率をグループで計算し、Bチームのほうが成績が良いことを確かめました。では、Bチームに依頼するのが良いのか? 教員は別のデータも示します。
教員が示したデータは、両チームの過去の打ち上げの記録です。打ち上げた日付と、その結果から何が読み取れるか? 再びグループで話し合い、Bチームは初めこそ成功しているものの、回を重ねるごとに失敗が続いていることがわかりました。そこから「天気はどうたったのか?」「どんな場所で打ち上げたのか?」など、子どもたちからいろいろな問いが発せられ、最後に「成功率だけではどちらに依頼したらいいか決められない」という結論に達しました。
この授業で、教員は「割合」について考えさせるとともに、一つの要素だけで物事は判断できず、さまざまな要素を考えなくてはならないことを子どもに気づかせました。計算によって“正解”を求めて終わりにするのではなく、さらに恊働しながら算数を超えて広く、深く考える。そうした授業を教員たちが工夫して創っています。
教員が示したデータは、両チームの過去の打ち上げの記録です。打ち上げた日付と、その結果から何が読み取れるか? 再びグループで話し合い、Bチームは初めこそ成功しているものの、回を重ねるごとに失敗が続いていることがわかりました。そこから「天気はどうたったのか?」「どんな場所で打ち上げたのか?」など、子どもたちからいろいろな問いが発せられ、最後に「成功率だけではどちらに依頼したらいいか決められない」という結論に達しました。
この授業で、教員は「割合」について考えさせるとともに、一つの要素だけで物事は判断できず、さまざまな要素を考えなくてはならないことを子どもに気づかせました。計算によって“正解”を求めて終わりにするのではなく、さらに恊働しながら算数を超えて広く、深く考える。そうした授業を教員たちが工夫して創っています。
英語は個に寄り添う少人数授業
本校では2018年度より新カリキュラムをスタートさせ、さらに教育を刷新しています。なかでも、創立時からネイティブ教員が指導した伝統の英語教育をより充実させました。その方針は「個に応じた指導」と「聞く・話す・読む・書く」の4技能を伸ばすことです。そのために全学年で習熟度別にクラスを2分割し、それぞれネイティブ教員と日本人教員がペアで授業をします。近年ではインターナショナルスクールからの入学生も増え、英語レベルの差が大きくなっています。個に応じて手厚く教え、一人ひとりが持つ力を伸ばしていきます。
英語の授業は、会話が週1回、読み・書きが週1回。加えて高学年は、毎日15分間の放課後モジュール学習を行います。英検取得も推進しています。年2回英検の受付を行い、放課後に対策教室を開きます。学年にかかわらず自分の力に応じて受けられることもあり、100名を超える子どもがチャレンジ。「6年生までに5級取得」を目標として掲げる中、準2級や3級を取得する子どももいます。
英語の授業は、会話が週1回、読み・書きが週1回。加えて高学年は、毎日15分間の放課後モジュール学習を行います。英検取得も推進しています。年2回英検の受付を行い、放課後に対策教室を開きます。学年にかかわらず自分の力に応じて受けられることもあり、100名を超える子どもがチャレンジ。「6年生までに5級取得」を目標として掲げる中、準2級や3級を取得する子どももいます。
レシテーションコンテスト・オーストラリア相互訪問
4年生以上は、英語の上達を世界標準で測ることのできるTOEFL Primaryを全員が受験します。客観的な測定によって、学校とご家庭で、お子さんの英語能力の伸びを確認、共有しています。
高学年ではレシテーションコンテストにも取り組みます。これも昼休みや放課後などにネイティブ教員から熱心な指導を受け、上位者は外部のコンテストにも出場して優秀な成績を収めています。以上のように、英語の授業をはじめモジュール学習、英検、レシテーションコンテストなど、子どもたちはほぼ毎日課外でも英語を学ぶことになるのです。
校外での英語教育・国際交流は20年以上の実績があります。オーストラリアの小学校との相互訪問です。9日間のホームステイ体験、英語学習、異文化理解のための体験活動など、充実した内容となっています。さらに、2017年より福島県のブリティッシュヒルズにて語学研修をスタートさせました。これらの行事は4年生以上の希望者が対象で、例年多くの子どもが参加しています。
高学年ではレシテーションコンテストにも取り組みます。これも昼休みや放課後などにネイティブ教員から熱心な指導を受け、上位者は外部のコンテストにも出場して優秀な成績を収めています。以上のように、英語の授業をはじめモジュール学習、英検、レシテーションコンテストなど、子どもたちはほぼ毎日課外でも英語を学ぶことになるのです。
校外での英語教育・国際交流は20年以上の実績があります。オーストラリアの小学校との相互訪問です。9日間のホームステイ体験、英語学習、異文化理解のための体験活動など、充実した内容となっています。さらに、2017年より福島県のブリティッシュヒルズにて語学研修をスタートさせました。これらの行事は4年生以上の希望者が対象で、例年多くの子どもが参加しています。
土曜英語スクール「TSS」で国内留学
2009年よりスタートした英語スクール、TSS(Tezukayamagakuin Saturday School)は、毎週土曜日に本校の敷地内で実施し、全学年の希望者が参加しています。本校児童のほか外部の児童も受け入れ、例年200名(うち120名以上が本校児童)を超える子どもが通っています。外部からは、各国の子どもたちが参加し、ネイティブ講師の国籍もさまざま。国際色豊かな環境です。
朝9時20分に登校し、午後3時半まで5コマの授業を行います。speaking ・listening ・reading ・writing の授業をはじめ、図工や音楽の授業、さらにハロウィンやクリスマス、京都・奈良遠足などのイベントを企画し、異文化や日本文化も学びます。これらすべてネイティブ講師が英語のみで教え、子どもも基本的に日本語使用禁止です。
クラスはグレード別による少人数制で、ネイティブの担任がつき、朝や帰りのホームルームも行います。生活ルールなど校則も定めるなど、まるで海外の学校に留学したよう。実際に年間30回の授業を6年間受けることで、1年間留学するのと同程度の英語力が身につくプログラムとなっています。
朝9時20分に登校し、午後3時半まで5コマの授業を行います。speaking ・listening ・reading ・writing の授業をはじめ、図工や音楽の授業、さらにハロウィンやクリスマス、京都・奈良遠足などのイベントを企画し、異文化や日本文化も学びます。これらすべてネイティブ講師が英語のみで教え、子どもも基本的に日本語使用禁止です。
クラスはグレード別による少人数制で、ネイティブの担任がつき、朝や帰りのホームルームも行います。生活ルールなど校則も定めるなど、まるで海外の学校に留学したよう。実際に年間30回の授業を6年間受けることで、1年間留学するのと同程度の英語力が身につくプログラムとなっています。
女子の多くが内部進学・男子は外部受験も
卒業後の進路については、併設の帝塚山学院中学校高等学校(女子校)、泉ヶ丘中学校高等学校(共学)への内部進学をはじめ、外部中学へ進む児童もいます。
帝塚山学院中学校高等学校には、美術・音楽系、英語や医歯薬系など多様なカリキュラムを設置するヴェルジェコースと、関西学院大学への進学を前提とする関学コースがあります。泉ヶ丘中学校高等学校は特別選抜コースや医進コース、薬学系コースなど志望に応じたコースが充実し、受験対策もしっかりと行い、京大・阪大などの難関国公立大、関関同立、医歯薬系などに多く合格しています。
以上の二つの併設中学・高校は、一般受験者の人気も高まっている状況です。本校からの内部進学は成績等の基準があり、人気のコースは希望が通らない場合もあるため、教員はしっかりと学習指導を行っていきます。国語、算数、理科などはオリジナル問題集で基礎基本を身につけさせます。高学年の国語・算数は、クラスを「アドバンス」「ベーシック」の2つに分け、子どもがどちらかを選んで受けます。また、放課後はどの学年も補習を行い、苦手分野をなくすようにします。
例年女子は7割以上が併設中学へ内部進学し、外部中学へは、四天王寺・清風南海・開明・神戸女学院などへ進学しています。男子は女子に比べて外部受験者が多く、併設の泉ヶ丘中学校へ約26%が内部進学するほか、西大和・星光・清風南海・帝塚山学園・清風・明星などに進んでいます。
帝塚山学院中学校高等学校には、美術・音楽系、英語や医歯薬系など多様なカリキュラムを設置するヴェルジェコースと、関西学院大学への進学を前提とする関学コースがあります。泉ヶ丘中学校高等学校は特別選抜コースや医進コース、薬学系コースなど志望に応じたコースが充実し、受験対策もしっかりと行い、京大・阪大などの難関国公立大、関関同立、医歯薬系などに多く合格しています。
以上の二つの併設中学・高校は、一般受験者の人気も高まっている状況です。本校からの内部進学は成績等の基準があり、人気のコースは希望が通らない場合もあるため、教員はしっかりと学習指導を行っていきます。国語、算数、理科などはオリジナル問題集で基礎基本を身につけさせます。高学年の国語・算数は、クラスを「アドバンス」「ベーシック」の2つに分け、子どもがどちらかを選んで受けます。また、放課後はどの学年も補習を行い、苦手分野をなくすようにします。
例年女子は7割以上が併設中学へ内部進学し、外部中学へは、四天王寺・清風南海・開明・神戸女学院などへ進学しています。男子は女子に比べて外部受験者が多く、併設の泉ヶ丘中学校へ約26%が内部進学するほか、西大和・星光・清風南海・帝塚山学園・清風・明星などに進んでいます。
アフタースクール「TASC」は全学年対象
TASC(Tezukayama After School Club)は、本校が運営する放課後のアフタースクールです。本校教員や、校長経験者などがスタッフとなり、子どもをあずかります。その対象も全学年へと規模を広げ、学年に応じたプログラムを実施しています。まず、各学年とも宿題に取り組んだあと、1~3年生はスポーツ、計算・そろばん、パソコンアート、漢字・かきかた、クリエイティブクラフトなど。4年生以上は「学習TASC」として、基礎プリント学習、発展プリント学習、基礎力テストなどを行います。平日は17時45分まで(18時30分まで延長可)、長期休暇中も実施します。
最初にお話ししたように、本校ではこれからの100年に向けて、「恊働学習」や「英語教育」などさまざまな教育改革に取り組んでいます。そのなかで、入試では「人の話を聞く姿勢」をなによりも重視します。入学後の学習や生活を前提として、先生の話を最後まできちんと聞く・協調性や思いやりをもって行動できることが大切です。公共の場を乱さず、自分のことも自分でできることはとても大切なことです。
時代が急速に変化するなか、本校では伝統の教育を守り、いつの時代も求められる強い心や、人への思いやりを備えた豊かな人間性を培います。そして、新時代に応じた教育も推進し、生涯を通して自ら学び続ける力、新しい社会に貢献できる力を、私たち教員は熱意を持って育んでいきます。