追手門学院小学校
「敬愛」「剛毅」「上智」の教育で社会のリーダーを育成
追手門学院小学校 校長 井上 恵二 先生のお話
校長 井上 恵二 先生
追手門学院小学校 校長 井上 恵二 先生のお話
「社会有為の人材育成」をめざして
「敬愛」は礼儀・礼節、相手への敬意や思いやり、自尊心を表し、「剛毅」は強い心とたくましい身体を表し、「上智」は知識と知恵、求道心を表します。この3つはいつの時代のリーダーも必ず備えなくてはならないものです。時代が急速に変化し、新しい教育が求められるいまこそ、130年の歴史を通して守ってきた本校の教育の原点を全教員で見つめ直し、子どもたちにも働きかけています。
日々の生活や授業で「敬愛」を身につける
まず、大切なのは「敬愛」です。1年生は礼儀・礼節の教育から始めます。登下校時は正門で一礼し、職員室への出入りも「失礼します」と挨拶する。身だしなみなどのしつけも徹底します。制服はきちんと着ることができているか、校章バッチは曲がっていないか。私たち教員は、追手門学院小学校の子どもとして制服に誇りを持とうと呼びかけます。靴はそろえて、つま先が靴箱の壁にちょっと触れるところに置きましょう。上着を脱いだら表を内側に返して、三つに折り畳みましょう。そんな指導を日々行なっています。
授業態度も「敬愛」にかかわる教育です。背筋を伸ばして座る。鉛筆を正しく握り、教科書を正しく持つ。定規も正しく押さえ、真っすぐな線を引けなくてはいけません。ノートに書く時は、左手をノートに添える。こうした学習面・生活面の基本を、教員が6年間繰り返し教えます。
感謝の気持ちや物を大切にする心を育むことも、「敬愛」の教育です。そのために、「座禅会」や「学用品供養祭」など本校ならではの全校行事があります。「座禅会」では、和尚様を呼んでお話を聞きます。年度末の「学用品供養祭」では、子どもたちが1年間に使った鉛筆を持ち寄り、祭壇で僧侶に供養してもらいます。本校では、全学年ともシャープペンシルを使いません。鉛筆でなくては、筆圧の加減を覚え、漢字のトメ・ハネを正しく書けるようになりません。子どもたちは鉛筆が短くなるまで大切に使います。
「剛毅」を養う3㎞の遠泳
遠泳は正しい泳法でなくては、泳ぎ切ることができません。そこで、平泳ぎの型のテストも行います。1年生からクロールなどさまざまな泳法を繰り返し練習し水泳授業の集大成として遠泳が待っています。もちろん安全対策は万全です。緊張と恐怖心に打ち勝ち泳ぎ切ったら児童は、抱き合って泣く子もいます。頑張ればできる。最初はカナヅチでもやり遂げられる。子どもたちは大きな達成感とともにそれを実感します。
臨海学舎を境に、6年生はがらりと変わります。さらに、体育大会で男子は伝統の組体操にも挑戦し、またここで一段と成長します。受験に向き合う心の成長にもつながります。そして、自分の志望校という高いハードルを越えていきます。
高いハードルを乗り越えられる子どもに
行事だけでなく、教員は日々の指導も一歩一歩地道に行います。できなかったらやりなおしをさせる。できたら大きくほめる。その繰り返しによって、子どもは、例えば「挨拶ができる」ことが大事なのだと理解し、自信をつけて行くのです。先生自身が決してあきらめることなく、子どもの力を信じて頑張らせます。
「上智」を発展させる「メディアラボ」
そのための新しい施設が、2019年に完成予定の新東館「メディアラボ」です。校地を広げ、地上3階・地下1階の校舎を建設します。新しい英語教育と、ICTを活用した教育を担う施設で、イングリッシュゾーン、2つのフューチャーラボ、アクティブスペース、ライブラリースペース、屋内運動スペース、屋上から成ります。
「メディアラボ」は、2階・中2階・3階がスキップフロアでつながり、一つの広大な学習空間となっていることが大きな特長です。それにより、グループ学習や個別学習、図書館利用などが、連続した流れのなかでスムーズにできます。また、最先端のICTの導入も特長です。
英語の少人数指導・最新の巨大スクリーン
2階・3階に設置する大小のフューチャーラボには、それぞれ220インチと150インチのスクリーンを備え、さらにそれぞれのスクリーンの横に120インチスクリーンを2つずつ備えます。これにより、視覚に訴えながらリアルに、わかりやすく教えることができるのです。
例えば、社会科で、はえ縄漁を学ぶときには、海を泳ぐ5mの実物大のマグロをスクリーンに映し出すことができます。歴史の授業では、奈良の大仏の手のひらを実物大で映し、なぜこんなに大きな大仏をつくったのか子どもに問いかけたり、昔の町並みを大きく映して見せ、疑似体験を通して当時の暮らしについて考えさせたりすることができます。
もちろん、実体験ができれば一番ですが、すべてを実体験することはできません。フューチャーラボは、実体験に限りなく近い学びができるところに意味があるのです。子どもの知的好奇心や学びへの意欲をかき立てるのにとても有効です。子どもたちが探究したことを発表する場としてもこの大スクリーンを大いに役立てていきます。
主体的で深い学びを支えるデザイン
2階のアクティブスペースは、グループ学習に対応します。本校では各教科で、子どもが主体となり友だちと意見を交わしながら学びを深める学習を進めています。この学びをさらに実践的に行うことのできる広い空間がアクティブスペースです。
蔵書2万冊のライブラリースペースは中2階に設置し、アクティブスペースの行き来が容易です。また、パソコンルームもライブラリースペースに設置しています。こうしたデザインにより、グループ学習の最中に資料を調べたり、インターネットで情報を収集したり、より機能的に学ぶことができます。また、パソコンルームの充実により、2019年度よりプログラミング学習を本格化し、ロボットプログラミングなどを導入します。現在、すでに1~4年生は情報の授業で音楽プログラミングや映像を使ったプレゼンテーション、情報リテラシーの学習を、高学年はロボットプログラミング学習を行っています。
1階の屋内運動スペースは半野外となっていてグラウンドとつながり、天候に左右されずに活動できます。また、文化祭での模擬店や演奏会など、用途は大きく広がります。子どもたちが「青空園」と名付けた屋上は、目の前の大阪城が一望できる素晴らしい眺めです。ここで理科学習を行います。植物を育てて観察したり、にんげん日時計や星座盤で学んだりと、理科への興味関心を引き出すたくさんの仕掛けがあります。
革新が伝統をつくる
例えば、子どもが主体となり、友だちと話し合いながら学びを深める主体的学習について、教員たちは早くから研究し、授業で実践してきました。現在盛んに「アクティブラーニング」が叫ばれていますが、その中身は、本校が行ってきた子ども主体の学習と同じです。ICTを活用した授業についても、国語や社会、理科など各教科で進め、子どもたちもタブレット端末を活用して学んでいます。
本校の進める新しい教育に「メディアラボ」を大きく役立て、また新たな伝統を築きたいと考えます。同時に、「敬愛」「剛毅」「上智」を培うために受け継いできた教育も守り、これからも社会有為のリーダーを育成していきます。