取材レポート

智辯学園奈良カレッジ小学部

みらい型リーダーの育成!豊かな人間性を培い、主体性・協働性・創造性を伸ばす智辯学園奈良カレッジの12年一貫教育

大阪府と奈良県の府県境に位置しており、大阪府・奈良県から多くの児童さんが通う智辯学園奈良カレッジ小学部。万葉集にも詠われた二上山の北麓に位置し、金剛生駒紀泉国定公園内の深い緑に包まれた静かな環境にあります。一歩足を踏み入れると、これが小学校?と思う程、壮大なスケールと、校舎と自然のコントラストに圧倒されました。ホームページやパンフレットで見て想像する雰囲気を遥かに超えます。
開校20周年を迎え、今年度より新たに「みらい型リーダーの育成」を掲げて様々な取り組みを始めています。広大な環境を活用した「里山プロジェクト」など、校長の山本博正先生、教学顧問の藤田良一先生、入試広報部主任の神田賢宏先生にお話を伺いました。

校長 山本博正先生、教学顧問 藤田良一先生、入試広報部主任 神田賢宏先生のお話
みらい型リーダーの育成とは?
あたりまえのことを、あたりまえに
College Time ―環境を活かした「里山プロジェクト」と「探究プロジェクト」―
12年一貫教育
まとめ
校長 山本博正先生

校長 山本博正先生

みらい型リーダーの育成とは?

「みらい型リーダーの育成」とはどのようなものなのか、山本校長先生に伺いました。

「奈良カレッジの教育には2本柱があります。1つは『豊かな人間性を培う』、もう1つが『能力を最大に伸ばす』です。これらの教育によって育った子どもたちの将来像を具現化したのが『みらい型のリーダー』です。
近年、子どもたちを取り巻く社会環境の変化は急激に加速しています。これからのリーダーには、先の見えない状況であっても未来を鋭く見つめ、仲間と共に時代を生き抜いていく力が必要です。知識・教養・スキルはもちろん、自身にも周りを惹きつけるような人間的な魅力があり、仲間と一緒に共に活躍できるようなリーダー像をイメージしています。 『みらい型リーダー』には2つの要素が必要だと考えています。1つ目は、『豊かな人間性』。人間としての核となるのは、道徳心、倫理観が養われていることであり、本校では、仏教の精神をもとにして、豊かな人間性をしっかりと養います。2つ目は、『主体性・協働性・創造性』。自ら考え最後までやり遂げる力、仲間と意見を交わしながら集約し目標を達成する力、そこから新しい価値を生み出す力です。この二つを小学生のうちから養うことで『みらい型リーダー』が育成できると考えています。」

あたりまえのことを、あたりまえに

智辯学園奈良カレッジ小学部では、”あたりまえのことを、あたりまえに”できるようになることにもこだわっておられます。

山本校長先生は、「 “人”としてどう生きるのか? “人”として将来世の中の他の人々の為に何ができるのか?人間としての“核”ができていないと、いくら知育を積み上げようとしても積みあがらない状態に陥ってしまいます。さらに、自分達がこの世に生を受けたこと、様々な恩を受けたことに感謝して、一人の人間としてその感謝を世の中にどうお返ししていくのかを考えたときに、ここで知識(学問)も必要になってきます。子どもたちの持っている力を最大限に伸ばし、恩返しできるような人間に育ってもらえればと考えています。学校に登校した際は『おはようございます!』と挨拶をし、授業中は『はい!』と元気に返事ができ、何かして頂いた事に対して『ありがとう』と感謝できることはもちろんですが、勉強をするのも人として“あたりまえ”にやっていかなければならないことです。“あたりまえのことを、あたりまえに”やっていくことで円熟し、豊かな人間性を養う事に繋がると思っています。」とおっしゃられました。

College Time ―環境を活かした「里山プロジェクト」と「探究プロジェクト」―

智辯学園奈良カレッジ小学部で力を入れている取り組みについて伺いました。

山本校長先生は、「今年から主体性・協働性・創造性を育てるための主軸となる教科として、”College Time(C-time)”を設け、『里山プロジェクト』『探究プロジェクト』を充実させました。ここでは『里山プロジェクト』に焦点をあててご紹介します。豊かな自然を活かし、森での活動や、田畑を耕作し、作物を栽培しながら子どもたちが主体的に活動できるように進めています。教員が『このように育てましょう』と提案せず、子どもたち自身が関心を持ち、どうすれば作物が育てられるのか、活動の中で工夫して考えてもらうようにしています。この様な活動の中でリーダーが育って欲しいと考えています。」とおっしゃっています。

この1年間の子どもたちの変化を訪ねました。

「休憩時間に多くの子が里山の田畑の様子を自分から見に行くようになりました。『植えた作物はどうなっているかな?』『こんな状態になっているけど、どうしたらいいかな?』など前向きな姿勢や、興味や関心が日を追うごとに高まってきたように思います。教員に教えられた通りに育てた時の観察の仕方とは違い、自ら進んで行動に移す姿がみられるようになりました。」(山本校長先生)

その一方で失敗する事もあるそうです。

「春から夏にかけて、3年生がキャベツを育てましたが、虫食いなどの被害に遭ってしまいました。その後、キャベツを育てたときの経験を活かし、秋から冬には立派なハクサイを育てることができました。失敗することはとても大事です。次に繋げるために、『どうしてこういう結果になったのかな?』『何で失敗したのだろう?』『じゃあ、次はどうしていけばいいのかな?』という発想を持ってもらう。『これがだめなら次はどうしようか?』と考えることが、また次の行動に繋がるので、諦めない心を持つことは非常に大切です。」と山本校長先生はおっしゃっていました。
C-time 里山プロジェクト

C-time 里山プロジェクト

C-time 探究プロジェクト

C-time 探究プロジェクト

学校の近くに天野ぶどう園さんの販売所があるそうです。以前から出前授業でお世話になっていましたが、数年前に苗を頂いて栽培することになったそうです。育てる過程で鳥に啄まれ、なかなか実がつく所まで辿り着かなかったそうですが、今年はやっと小さいながらも、全員に行きわたる量の実が収穫できたそうです。

「なかなかうまくいかないので、育てるのが難しい故、質問がたくさん出てきます。自分達の経験を、次は下の学年の子へ説明するため、反省点・改善点などを熟考し、プレゼンテーションする予定です。」と山本校長先生は教えてくださいました。

さらに、藤田教学顧問先生は、「将来は、奈良カレッジ産のぶどうができたらなぁ」とおっしゃっていました。「この自然環境があるからこそできることで、森に入って虫を捕まえたり、川と池があるので、そこに住む昆虫や生き物を観察したり。大阪市内からわずか30分程度でこのような環境が揃っているのはうちの学校の一番の魅力です。」 とのことです。

子どもたちにとって、C-timeは楽しい時間のようです。

藤田教学顧問先生は、「どの授業も生き生きと意欲的に取り組んでいます。その成果がよくわかるのが、中学部へ進学した際に、中学部から入って来られた生徒さんが、内部進学の生徒を見て、積極的に授業に参加する姿勢を見てびっくりするという話をよく耳にします。」とおっしゃられました。

12年一貫教育

12年一貫教育についても、山本校長先生にお伺いました。

「この学校を作った時のコンセプトです。12年かけて、小中高を分断せずに一つの学園として、勉強だけにフォーカスせず、人間性を養い、主体的に考え行動できるよう丁寧にじっくり人間教育をするのが目的です。『我が子と思って接するように。』との理事長からの言葉があります。子どもの12年にはそれぞれ色々な人生があります。私たち教員は、大変なときもしっかり受け止められるような愛情を持って、責任感のある教員でいたいと思っています。前理事長が『(教師は)求道者(ぐどうしゃ)たれ』とおっしゃっていました。人として、どう子どもと向き合うか常に意識をして、どうあるべきかを考えて、何が最善か考えて教育に励んでいます。子どもたち、保護者の方々から教えていただいたことは数え切れない。今度は私が、一人の人間として感謝の心を持って、恩返しをしていかなければならないと思い日々接しています。『子ども=仏さんと思いなさい。』ともよく言われました。子どもの中に人間が本来持っている良い心を見て、しっかり大事にして育てあげることが、この学校の教育です。教育とは簡単に言うと、『知・徳・体』をしっかり育て成長させていくことだと思いますが、そこに関わる者の思いが熱くないと、子どもにはよく伝わらないと思っています。三位一体の教育、子ども・保護者・教員のこの三者が常に連携を深めながら、一体となって前に進むことが奈良カレッジの教育です。」

子どもたちと一緒にいる醍醐味を広報の神田先生に伺いました。

「子どもたちの目が輝いている瞬間を見ることができることです。」と即答されました。「『知りたい!』『やりたい!』と言ってくれたときが、こちらとしても『よし!きた!!』と思う瞬間です。主体性を持って、将来は自分から動き、最後までやり遂げることができる人間になって欲しいと思っています。『やりたい!』を上手に引き出すことができたときは、こちらも嬉しいですし、子どもたちもやる気になっているいい関係のときだと思います。」とおっしゃいました。

その一言を引き出すには最初の声掛けが重要だそうです。
「授業でも、休み時間でも、C-Timeでも、最初にかける一言によってその後の展開が全く異なってきます。こちらから細かい指示してしまうと全て終わりで、子どもたちは受動的になりそのレールにしか乗らなくなります。『これ、やってみない?』と誘うように言ったときが一番やる気を持ってくれます。そして、最近よく教員が言うようになった言葉が『とりあえず、やってみよう!』です。子どもたちがやる気になった瞬間にこの言葉を掛けます。その効果もあって、子どもたちが主体的に取り組んでくれるので、教員もそれに応えようと日々一生懸命考え努力するようになります。子どもたちのために楽しい授業をするにはどうしたらいいのか日々考えています。」とおっしゃっていました。

教学顧問の藤田先生は、「結果的にこちらが子どもたちから教えてもらっています。アクティブラーニングや非認知能力を育てるなどと最近言われていますが、本校は20年前から実践しています。学校は学びの場ではありますが、子どもたちにとって楽しい場でなければなりません。喜んで学校へ来て、授業が『面白い!』と思ってくれて、『どうやってやったらいいのだろう?』と興味を持ってくれる体験を積み重ねることで、自ずと学習は進みます。我々教員は、『知りたい!』『やりたい!』が進む授業を一生懸命考えて、子どもたちと共に、保護者の方と共に、歩んでいきたいと思っています!」と熱く語られていました。

まとめ

先生方はとても気さくで、包み込んで下さるような優しく温かい雰囲気に溢れていました。お話を伺い、筆者自身、同年代である小学生の子育てをしていますが、「子育てとは?」と問われた際、ICT、語学、勉強の“How to”など、答えが出やすい「技術」を磨くことに注視しがちになっていることに改めて気がつきました。きっと私だけでなく、みなさんの中にも「ドキっ!」とした方がおられるのではないでしょうか。心の教育とは成果が目に見えづらく、はっきりとした成果として現れませんが、「人として」、「人とは何か」、「人の核」が成り立たないうちに、いくら積み上げても何も成し得ない人間になってしまいます。智辯学園奈良カレッジの先生方のお話を伺い、「人としての信念」を得た子どもたちが自ら考え、失敗を繰り返しながら学習し、仲間とともに「協働」する、無限の可能性が存在する人生は、どれほど豊かだろうと想像しました。自ら考えて行動する子は、必ず勉学にもつながると思います。そして繰り返し先生方がおっしゃられていたのは、得た恩は自分だけのものにせず、他者へ「恩返し」をすること。「あたりまえのことを、あたりまえに」。子どもたちと共に心の教育を施して下さる先生方がそばにいる事は、保護者にとても心強い存在だと感じました。
先日メディアで、「米作りは脳にも心にも良く、10代~20代前半に農業を最低でも5年以上経験すると、企業に就職した際に69%が異例の出世を遂げており、不平等であることがあたりまえ、上手くいかないことがあたりまえなので、やり方を変えれば良い、次はうまくいくかもしれないというメンタリティが育つ」と紹介されていました。この考え方は奈良カレッジの考えと通じるものがあると思いました。
ぜひ一度、この広大な智辯学園奈良カレッジ小学部に足を運んで、広大な里山の自然環境と先生の温かさに触れて下さい。この学校の興味深さや良さが感じられると思います。

取材協力

智辯学園奈良カレッジ小学部

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