取材レポート

箕面自由学園小学校

子どもの「やりたい!」を育む、低学年からの理科教育

自然豊かな環境の中、「子どもたちが夢を持ち、夢をかなえる意欲を育てる教育」を実践してきた箕面自由学園小学校。2018年からは4年生以上の教科担任制・低学年からの理科教育・英語教育の充実・コース制を導入し、学びをより進化させました。「子ども達が、教養豊かな社会人という建学の精神を体現し、社会で活躍している姿を見たい」と語る校長の森創先生と理科教員の市原義憲先生に、低学年からの理科教育を中心に同校の教育の特長について、お話をお伺いしました。

箕面自由学園小学校 校長 森創先生・理科教員 市原義憲先生のお話
校長 森創先生

校長 森創先生

理科教員 市原義憲先生

理科教員 市原義憲先生

2018年から改革を進め、これからの社会で必要とされる学びを提供

箕面自由学園小学校では2018年から、4年生以上の教科担任制と英語授業の毎日化、1.2年生で理科授業の開始、発展・進学の2コース制の導入など、多くの改革を実施してきました。このような改革に踏み出した理由について、森先生は「子ども達の活躍するフィールドを狭めることなく。世界を股に掛けて活躍する国際社会人になって欲しいという想いがあった」と話します。

「今の子ども達が大学を出て、社会人になる頃には、日本国内だけで仕事に就くとは限りません。今でも海外で働いている方もたくさんいらっしゃいますが、ある程度の水準の給与を得ようと思うと海外に行かざるを得ないということが将来的に起こってくるでしょう。英語を日常的に使えるようになるためには英語を毎日学習していなければいけないと考えて、英語の授業を毎日実施することにしました」(森先生)

森先生は英語の授業を充実させるにあたって、日本文化を学ぶことも大切にしていると言います。

「英語そのものを学ぶことはもちろん、日本の伝統的なものを自分がきちんと理解する体験、例えば日本のお箸文化を伝えようというテーマでは箸袋を作る体験なども授業に取り入れています。やはり日本人として日本の文化はこんなに素晴らしいんだよと自信を持って言えることは、世界と充分に渡り合うためには必要です」(森先生)

子ども達の興味と追求心をくすぐる実験&工作

続けて、森先生は1.2年生からの理科授業について、「新学習指導要領でも『思考力・判断力・表現力』という3つの力に言及していますが、思考力を付けるためには自分の頭で考え順番に積み上げていく力が必要です。それには、子どもの興味関心をひく理科はとても向いていると考え、週3時間ある生活科の授業から理科分野に限定した授業を週1時間作ることにしました」と説明します。

低学年の理科授業で一番大切にしているのは、子ども達がやりたいと思えることだと市原先生。「不思議だな」「追求してみたいな」と子ども達が感じるような実験や工作を設定し、特に1年生の最初では空気砲やアルコールの爆発を利用したロケットなど、動きや音があったり、色が変わったりして、子ども達の興味をひくものや、1年生でも自分で簡単にできるものを行っているそうです。

「ビー玉はそのまま転がすだけでも面白いですが、アルミホイルで作った帽子をかぶせるとUFOみたいな不思議な動きを見せてくれます。アルミホイルの締め付け方を調節することで、スーッと進んだり、カクカクッとした動きになったりします。締め付け方と動きの関係を子ども達自身が試行錯誤することで見つけられるよう声かけをしつつ、授業を進めます。また、人に教えることでより一層理解が深まるので、子ども達同士での教え合いも大切にしています」(市原先生)

工作ではハサミの使い方に始まって、結び目の作り方などの技術を一つひとつ丁寧に指導していくと言います。

「ブーメランを作る時に角があると危ないので、先の角を子ども達に切ってもらうのですが、ハサミの先でチョキンと角を落としてしまう子が多いんですね。カーブをキレイに付けようと思うと、ハサミの奥まで紙を差し込んで、少しずつ切ることが必要です。ほんのちょっとのことですが。コツが分かっている、分かっていないで出来上がりが随分違ってきます。一つひとつの技を工作の度に説明して、子ども達は一度やっただけでは忘れてしまいますから、学年が上がっても繰り返し丁寧に指導しています。大分、子ども達の手先も器用になってきました」(市原先生)

また、5万平方メートルという広大な校地に植物が400種以上植えられており、季節を肌で感じられる同校の環境も、理科教育を進める上で大きな力となっています。

「植物がいっぱいあるので、虫もたくさん来ます。この環境は第2の教科書のようなもの。植物や虫の変化が見られるごとに子ども達にそのことを話したり、匂いをかがせるなど実際に体験させたりしています。カタバミは学園内だけでも6種類も生えています。カタバミで10円玉を磨くとピカピカになるんですよ。それも低学年から磨かせてみるのですが、結果が分かっていても面白いようで、高学年でも種類ごとに磨き比べをして汁が多い葉が良いのかな、など呟きながら楽しんでいますね」(市原先生)

これらの指導を行う上で大切にしている点は、あまり説明をしないことだと市原先生は言います。

「もちろん仕組みの説明をする時もありますが、しないことも多いです。説明を聞いただけで、しっかり理解できない子も多いですし、あえて分からないことを分からないまま置いておくことも重要だと考えているからです。その時にすべて分からなくても、学年が上がるにつれて、他の経験とうまく組み合わさって、『ああ、そういうことやったんか』と腑に落ちる。そういう形の方が、本当の理解につながります。特に、下の学年ほどあまり言わずに『なんか面白いね』という感覚を大事にしたいと思っています」(市原先生)

理科教育を通して育まれる生きる力

低学年からの理科教育を通して育まれる力について両先生に伺ったところ、市原先生からは「考える力とやればできるという自己肯定感ですね」と返ってきました。

「実験で色々なものを作りますが、作り上げた物が持つ不思議さや面白さに、子ども達は感動します。それが、自分でそんなスゴイ物が作れた、素敵な実験が出来たと、自分への自信にもつながります。理科だけじゃなく、生きる力の育みに良い影響を与えています」(市原先生)

森先生は、「理科の実験や観察では、自分で何かを見つけたり感じたりする、そしてそれらを友達や周りの人に伝えるという経験を積み上げていくことができます。実験を通して、自分の考えをきちん伝えるという経験を繰り返すことは、相手を説得できる表現力を身に付けることにつながります」と話します。

また、充実した理科教育での学びが中学受験でも役立っているとのこと。

「小学校で行った理科の実験が、中学の入試問題で出たと卒業生が報告してくれました。教員も受験のことを意識して実験等を行っているわけではありませんが、深掘りした内容を行っているからこそ、入試問題で同じものが出てきたのかと。中学校・小学校と校種は違いますが、理科の教員が子どもに持っていて欲しいと考える知識というのは同じなのだと感じました」(森先生) 最後に、森先生は子ども達が五感を使って学んでいくことの大切さについて、次のように説きます。

「子ども達に大人気の熱気球を飛ばす実験があるのですが、その実験ではアルコールを含ませた綿に火を付けて上昇気流を生み出し、気球を飛ばします。この実験の時、子ども達は綿が燃えている匂いを感じて、こんな匂いがある時に気球は上っていくと肌で感じています。こういった経験を積み重ねることで、身体全体で感じ取ったことが素晴らしい学びへつながっていきます。五感を使って感じたことは一生ものになります。教員にとってはとても面倒で時間のかかることですが、それを惜しまずやることが、子ども達の根っこの部分を作る・広げていくという上で大事だと考えています」(森先生)

まとめ

箕面自由学園小学校では、6年間で150ほどの実験を行っています。その実験を学校外の子ども達にも体験してほしいと、幼稚園年中~小学校3年生を対象としたイベント「リトル・サイエンスフェスタ」を毎年夏休みに開催。2021年はうさぎやモルモットの心音を聴診器で聞き比べる「あなたも獣医さんになれる」コーナーや実際に乗れるホバークラフト、ドローン操作、人工いくら作りなど、理科の面白さや不思議を追求する楽しさにあふれたプログラムを開講しました。この行事で市原先生の実験ショーを見て、市原先生の授業を受けたいと同校を受験するお子さんも毎年いるそうです。

「本校のホームページで公開している実験動画を見て、本校に来たいと言って来てくれたお子さんもいます。市原先生に習いたいときちんと動機を持って受験してくれるのはとても嬉しいです」と森先生は笑顔を見せます。

ホームページで公開されている学校紹介の動画でも、子ども達がいきいきと理科の授業に参加している姿がたくさん見られます。市原先生は、理科を学ぶことを通して、大人も子どもも幸せになってほしいと思い、日々の授業に取り組んでおられるそうです。このような暖かな思いのもと、楽しみながら思考力や表現力、生きる力を養っていけることは子ども達にとって、とても幸せなこと。
低学年からの理科教育をはじめとする子ども達の根っこを作り広げる教育を、6年間受けた子ども達が将来国際社会人として活躍する姿が目に浮かぶようです。

このページのTOP

取材協力

箕面自由学園小学校

〒560-0056 大阪府豊中市宮山町4-21-1   地図

TEL:06-6852-8110(代)

FAX:06-6843-3764

URL:https://mino-jiyu.ed.jp/ps/

箕面自由学園小学校