追手門学院小学校
「伝統と革新」を合い言葉に、将来につながる刺激を得る機会を数多く作る
教育理念「社会有為の人材育成」のもと、「敬愛(礼儀・礼節、相手への敬意や思いやり)・剛毅(強い心とたくましい身体)・上智(知識と知恵、求道心)」を教育目標に掲げ、日々の教育活動を展開する追手門学院小学校。同校は1888年創立という西日本で最も歴史のある私立小学校で、伝統を大切に受け継ぐ一方、新しい教育を積極的に取り入れる「革新」の精神を大切にする学校でもあります。
今回の取材では、「世界・グローバル・宇宙・人間」をキーワードに様々な経験や学びを提供する国際教育センターを設立し、様々なプロジェクトや コロナ以前の姿を取り戻しつつある日々の教育活動について、校長の井上恵二先生に話をお伺いしました。
追手門学院小学校 校長 井上恵二先生のお話
今回の取材では、「世界・グローバル・宇宙・人間」をキーワードに様々な経験や学びを提供する国際教育センターを設立し、様々なプロジェクトや コロナ以前の姿を取り戻しつつある日々の教育活動について、校長の井上恵二先生に話をお伺いしました。
追手門学院小学校 校長 井上恵二先生のお話
井上恵二 校長先生
追手門学院小学校 校長 井上恵二先生のお話
真の日本人として海外の最先端の学びに触れる
追手門学院小学校では、グローバル人材育成を目指す新しい機関「国際教育センター」 を設立し、様々なプロジェクトが進行中です。そのひとつである『NIPPON再発見プロジェクト』では、奈良や京都などでの写経体験や世界文化遺産巡り、能などの伝統芸能にふれる体験が計画されています。
国際教育と銘打ったセンターの活動の一環に同プロジェクトを位置付けた理由について、「グローバルに活躍するためには、自国の伝統や文化をきちんと知った上で語れる力が必要だと考えたからです」と井上先生は説明します。
「国際交流の場で他国の人と話す機会を持ったとき、たとえば禅について問われても、知らなくては何も説明できません。特に今はインターネットを介し、すぐに海外とも繋がれる時代です。異文化の人に、自信を持って自国の伝統や文化を語れる知識を養うことの必要性については我々も身をもって体験してきました。NIPPON再発見プロジェクトを通して、『真の日本人としての心と知識』を養った上で、2023年度以降、海外研修に赴きたいと考えています」
海外研修ではシリコンバレー、もしくはボストンのカリー大学でのSTEAM教育、国連本部の見学、フロリダにあるケネディ宇宙センターの訪問を予定しているそうです。この海外研修には、STEAM教育のS、国連本部のU、NASAのNとそれぞれの頭文字から『SUNプロジェクト』という名が付けられています。
「2022年度はまだ海外に行くのは難しいので、冬に関東にあるJAXAの施設の見学や体験型英語学習施設『TOKYO GLOBAL GATEWAY』での国内留学体験、日本科学未来館の見学を 計画中です。やはり子ども達には将来につながる刺激が必要です。同プロジェクトをはじめ、本物に触れることや世界最先端の学びを受ける機会を意図的に作ることで、子ども達の学びと将来へ向かう力を育んでいきます」
また、将来的には、国際教育センターで他校の国際教育担当者向けの講座やセミナーを開くことも考えているそうです。
「本校が海外との国際交流を始めて約50年になります。その経験を通して培ってきた色々なノウハウは、他校の国際教育においても有用だと考えています。追手門学院大学には国際学部 もありますので、大学教員に講演会やセミナーをしてもらうこともできます。『義務教育課程の国際交流で何をしたら良いのか』『どのように指導をしたら良いのか』と悩まれた時に、『追手門さんに尋ねたら分かる』と言われるような存在になれたらと考えています」
国際教育と銘打ったセンターの活動の一環に同プロジェクトを位置付けた理由について、「グローバルに活躍するためには、自国の伝統や文化をきちんと知った上で語れる力が必要だと考えたからです」と井上先生は説明します。
「国際交流の場で他国の人と話す機会を持ったとき、たとえば禅について問われても、知らなくては何も説明できません。特に今はインターネットを介し、すぐに海外とも繋がれる時代です。異文化の人に、自信を持って自国の伝統や文化を語れる知識を養うことの必要性については我々も身をもって体験してきました。NIPPON再発見プロジェクトを通して、『真の日本人としての心と知識』を養った上で、2023年度以降、海外研修に赴きたいと考えています」
海外研修ではシリコンバレー、もしくはボストンのカリー大学でのSTEAM教育、国連本部の見学、フロリダにあるケネディ宇宙センターの訪問を予定しているそうです。この海外研修には、STEAM教育のS、国連本部のU、NASAのNとそれぞれの頭文字から『SUNプロジェクト』という名が付けられています。
「2022年度はまだ海外に行くのは難しいので、冬に関東にあるJAXAの施設の見学や体験型英語学習施設『TOKYO GLOBAL GATEWAY』での国内留学体験、日本科学未来館の見学を 計画中です。やはり子ども達には将来につながる刺激が必要です。同プロジェクトをはじめ、本物に触れることや世界最先端の学びを受ける機会を意図的に作ることで、子ども達の学びと将来へ向かう力を育んでいきます」
また、将来的には、国際教育センターで他校の国際教育担当者向けの講座やセミナーを開くことも考えているそうです。
「本校が海外との国際交流を始めて約50年になります。その経験を通して培ってきた色々なノウハウは、他校の国際教育においても有用だと考えています。追手門学院大学には国際学部 もありますので、大学教員に講演会やセミナーをしてもらうこともできます。『義務教育課程の国際交流で何をしたら良いのか』『どのように指導をしたら良いのか』と悩まれた時に、『追手門さんに尋ねたら分かる』と言われるような存在になれたらと考えています」
オンラインを利用し、活発な国際交流を実施
同校では古くから国際交流を行っており、コロナ禍の前には長期休みを利用して、現地でホームステイをしながら姉妹校で授業を受けるなどの活動も実施していました。この2年は現地を訪れることこそできませんでしたが、ICTを活用し交流は続けてきました。そこに、2021年度新たに加わった取り組みがWEBファミリー交流です。その名の通りオンラインで家族ぐるみの付き合いをする取り組みで、同校とオーストラリアの姉妹校からそれぞれ4家庭が参加し、ペアとなった家庭と交流したそうです。
「子どもだけでなく、お父さんやお母さんにも入ってもらって、向こうのご家庭と自由に交流してもらいました。色んな話をしたり、勉強を一緒にしたり、写真交換などもしていたようです。7~12月の約半年間交流してもらい、10月末にはそれまでの交流の様子について、昼休みの校内放送の時間を使って、子ども達に英語でプレゼン発表してもらいました。とても充実した経験になっていたことはもちろん、低学年の子にも分かりやすい英語でしっかりと発表ができていたことにもびっくりしました」
同交流は2022年度も実施予定ですが、8家庭の募集に抽選になるほどの応募があったのだとか。家庭にもある程度負担がある取り組みですが、昨年参加した子ども達がプレゼン発表を通して他文化の家庭と交流できることの意義を伝えられたことも、多くの応募が集まった理由のひとつでしょう。
このように充実した国際交流が行われていると聞いて、入学前に英語を習得させておかなければと思われる保護者も多いかもしれません。しかし、井上先生によると「本校には非常に英語が得意な子から、入学してから英語を初めて勉強する子もいます。2021年度に代表者を募って作った英語の学校紹介ビデオでも、流ちょうに話す子もいれば、説明文をやっと覚えられたのだろうなと感じるたどたどしい英語を話す子もいました」とのこと。
続けて、井上先生は「得意でなくても一生懸命話す姿に感激しましたし、どのような英語習得レベルの子でもやりたいと思ったら挑戦してくれることが素晴らしいと感じています」とも話します。
同校では、外国語の授業は1クラスを習熟度別に2つに分けて展開し、それぞれが自分のレベルに合った授業を受けられる環境を提供しています。このような配慮が施されているからこそ、入学後に初めて英語に触れる子どもでも苦手意識を感じず、英語活動に積極的に挑戦する姿勢を育むことができるのではないでしょうか。
「子どもだけでなく、お父さんやお母さんにも入ってもらって、向こうのご家庭と自由に交流してもらいました。色んな話をしたり、勉強を一緒にしたり、写真交換などもしていたようです。7~12月の約半年間交流してもらい、10月末にはそれまでの交流の様子について、昼休みの校内放送の時間を使って、子ども達に英語でプレゼン発表してもらいました。とても充実した経験になっていたことはもちろん、低学年の子にも分かりやすい英語でしっかりと発表ができていたことにもびっくりしました」
同交流は2022年度も実施予定ですが、8家庭の募集に抽選になるほどの応募があったのだとか。家庭にもある程度負担がある取り組みですが、昨年参加した子ども達がプレゼン発表を通して他文化の家庭と交流できることの意義を伝えられたことも、多くの応募が集まった理由のひとつでしょう。
このように充実した国際交流が行われていると聞いて、入学前に英語を習得させておかなければと思われる保護者も多いかもしれません。しかし、井上先生によると「本校には非常に英語が得意な子から、入学してから英語を初めて勉強する子もいます。2021年度に代表者を募って作った英語の学校紹介ビデオでも、流ちょうに話す子もいれば、説明文をやっと覚えられたのだろうなと感じるたどたどしい英語を話す子もいました」とのこと。
続けて、井上先生は「得意でなくても一生懸命話す姿に感激しましたし、どのような英語習得レベルの子でもやりたいと思ったら挑戦してくれることが素晴らしいと感じています」とも話します。
同校では、外国語の授業は1クラスを習熟度別に2つに分けて展開し、それぞれが自分のレベルに合った授業を受けられる環境を提供しています。このような配慮が施されているからこそ、入学後に初めて英語に触れる子どもでも苦手意識を感じず、英語活動に積極的に挑戦する姿勢を育むことができるのではないでしょうか。
異学年交流・宿泊行事も再開
コロナ禍の中、多くの学校では様々な行事や異学年交流を中止、もしくは規模を縮小して開催せざるを得ませんでした。しかし、2022年度は社会での制限緩和が進む 仲、学校現場でもそれらの活動を再開する動きが見られるようになりました。同校でも宿泊行事を再開し、5月末には代表的な行事のひとつ・体育大会を開催しました。2021年度は学年ごとに開催した体育参観ですが、2022年度は1年と6年、2年と4年、3年と5年の2学年での合同体育大会として 実施し、保護者からも非常に好評だったと言います。
「低学年と高学年でペアを組んで行ったので、良い意味で子ども達の成長を感じられる行事になりました。特に1年と6年の保護者は『5年前はこんなに小さかったんだな』『5年後にはこんな風になるんだな』と感激したという声をいただきました」
3年ぶりの本格的な体育大会とあって、例年は4年生が踊る80周年記念で作った追手門音頭を全学年で踊ったそうです。踊りの際に高学年が低学年を優しくフォローする姿を見て、井上先生は「コロナにより失われていたものの大きさを実感しました。2023年度は6学年揃った体育大会ができれば」と話します。
また、宿泊行事も4月の6年生の修学旅行を皮切りに、5年のオリエンテーション合宿、4年の林間学舎も実施。2021年度も日帰りでは同行事を実施しましたが、宿泊を伴うことで子ども達が大きく成長したと井上先生は語ります。
「どの宿泊行事でも出発前と帰校後に挨拶をするのですが、久しぶりに宿泊を経験した子ども達を迎えたら、その顔つきが行く前と行った後では全然違うことをはっきりと感じました。充実した経験の中で多くの刺激を受けてきたのでしょう。同じ釜の飯を食うという言葉があるように、親元を離れることで成長します。楽しかった経験ばかりではなかったと思います。しかし、イヤだと思うことも大切な経験。子ども達の成長にはやはり色々な経験が必要です。コロナがあったことで育めなかった力は何かを今一度見直し、それを養う機会を学校生活に組み込んでいきたいと考えています」
「低学年と高学年でペアを組んで行ったので、良い意味で子ども達の成長を感じられる行事になりました。特に1年と6年の保護者は『5年前はこんなに小さかったんだな』『5年後にはこんな風になるんだな』と感激したという声をいただきました」
3年ぶりの本格的な体育大会とあって、例年は4年生が踊る80周年記念で作った追手門音頭を全学年で踊ったそうです。踊りの際に高学年が低学年を優しくフォローする姿を見て、井上先生は「コロナにより失われていたものの大きさを実感しました。2023年度は6学年揃った体育大会ができれば」と話します。
また、宿泊行事も4月の6年生の修学旅行を皮切りに、5年のオリエンテーション合宿、4年の林間学舎も実施。2021年度も日帰りでは同行事を実施しましたが、宿泊を伴うことで子ども達が大きく成長したと井上先生は語ります。
「どの宿泊行事でも出発前と帰校後に挨拶をするのですが、久しぶりに宿泊を経験した子ども達を迎えたら、その顔つきが行く前と行った後では全然違うことをはっきりと感じました。充実した経験の中で多くの刺激を受けてきたのでしょう。同じ釜の飯を食うという言葉があるように、親元を離れることで成長します。楽しかった経験ばかりではなかったと思います。しかし、イヤだと思うことも大切な経験。子ども達の成長にはやはり色々な経験が必要です。コロナがあったことで育めなかった力は何かを今一度見直し、それを養う機会を学校生活に組み込んでいきたいと考えています」
充実したICT教育が弁論大会の姿を変える
もうひとつの同校を代表する行事である弁論大会も3月に開催することができました。この弁論大会では、低学年では「できるようになったこと」、6年生では「私が伝えたいこと」など、学年ごとに決められたテーマについて自分の考えをまとめ、発表します。全員参加で行われ、各クラスの予選を勝ち抜いた4名が110記念ホールの舞台で発表するというスタイルで進められます。30年以上続く伝統行事ですが、この10年で発表の様子が変わってきたといいます。
「15年ほど前に1枚の写真を使って、その思い出を語るというテーマを設けたのが発端で、その後発表にPowerPointを取り入れるようになりました。2019年の1人1台端末制の導入を機に技術が飛躍的に向上し、今では4年生以上はアニメーションを駆使して、我々教員よりも上手なプレゼンテーション資料を作って発表してくれます」と井上先生は笑顔を見せます。
これも子ども達が1年生から週1時間設定されている「情報」の授業内で習得したスキルが遺憾なく発揮された結果です。同校のICT教育が充実していることは、全国の小学校では最多となる6名の教員が「マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)」に選出されていることからも読み取れます。
井上先生は「読み・書き・計算という実際に手を動かして知識を自分のものにしていくことを徹底し、しっかりとした土台を築いた上で、ICTという最先端教育を融合させて、効率的・効果的な 学習を展開していきます」と力強く語ります。
「15年ほど前に1枚の写真を使って、その思い出を語るというテーマを設けたのが発端で、その後発表にPowerPointを取り入れるようになりました。2019年の1人1台端末制の導入を機に技術が飛躍的に向上し、今では4年生以上はアニメーションを駆使して、我々教員よりも上手なプレゼンテーション資料を作って発表してくれます」と井上先生は笑顔を見せます。
これも子ども達が1年生から週1時間設定されている「情報」の授業内で習得したスキルが遺憾なく発揮された結果です。同校のICT教育が充実していることは、全国の小学校では最多となる6名の教員が「マイクロソフト認定教育イノベーター(MIEE)」に選出されていることからも読み取れます。
井上先生は「読み・書き・計算という実際に手を動かして知識を自分のものにしていくことを徹底し、しっかりとした土台を築いた上で、ICTという最先端教育を融合させて、効率的・効果的な 学習を展開していきます」と力強く語ります。
まとめ
同校では子ども達に将来につながる刺激を提供したいと、通常の学校生活でも最先端の学びに触れる機会を提供しています。そのひとつが「追手門宇宙スペース」の開設です。同スペースにはJAXAの協力のもと、実際に使われた宇宙服やISS(国際宇宙ステーション)の模型、宇宙日本食を展示する予定だとか。2週間の期間限定の展示ですが、多くの子ども達に夢を与えてくれることでしょう。
「以前、朝礼でISSの船長を務められた星出彰彦さんやJAXAの宇宙飛行士募集について話したことがあります。常々、私は本校の卒業生で宇宙飛行士になる人が現れてほしいと思っていて、そのことも話しました。すると、それを聞いたひとりの子が『私が宇宙飛行士になります』と。彼女はその翌週からスイミングスクールに通い始め、英語も猛勉強し、今3年生ですが先日の英検では2級にチャレンジしていました。『追手門宇宙スペース』が彼女をはじめ、たくさんの子ども達の刺激になってほしいですね」と井上先生は顔を輝かせます。
その井上先生の姿から、どれほど同校の先生方が子ども達に自分の夢を持つきっかけを与えてあげたい、自分の夢に近づく力を育んであげたいと考えているのかが伝わってきました。その思いが伝統を守りつつも新しい教育を率先して取り入れていく同校の教育の推進力となっているのでしょう。「伝統と革新」を合い言葉に進化をし続ける同校だからこそ、多くの保護者に選ばれているのだと感じた取材でした。
「以前、朝礼でISSの船長を務められた星出彰彦さんやJAXAの宇宙飛行士募集について話したことがあります。常々、私は本校の卒業生で宇宙飛行士になる人が現れてほしいと思っていて、そのことも話しました。すると、それを聞いたひとりの子が『私が宇宙飛行士になります』と。彼女はその翌週からスイミングスクールに通い始め、英語も猛勉強し、今3年生ですが先日の英検では2級にチャレンジしていました。『追手門宇宙スペース』が彼女をはじめ、たくさんの子ども達の刺激になってほしいですね」と井上先生は顔を輝かせます。
その井上先生の姿から、どれほど同校の先生方が子ども達に自分の夢を持つきっかけを与えてあげたい、自分の夢に近づく力を育んであげたいと考えているのかが伝わってきました。その思いが伝統を守りつつも新しい教育を率先して取り入れていく同校の教育の推進力となっているのでしょう。「伝統と革新」を合い言葉に進化をし続ける同校だからこそ、多くの保護者に選ばれているのだと感じた取材でした。