取材レポート

立命館小学校

ICTを活用した取り組みと心を育む異年齢活動を日常的に展開。コロナ禍でも、早期に時間割通りのオンライン学校再開を果たす

立命館学園初の小学校として2006年に開校。以来、「国際性」「人間性」「創造性」を育む教育を進めてきた立命館小学校。この春、学校長に就任された長谷川 昭先生に、同校ならではの教育とオンラインによる学校再開についてお伺いしました。

立命館小学校 学校長 長谷川 昭先生 のお話

立命館小学校 学校長 長谷川昭先生のお話

開校当初より教員として子ども達を見守ってきた長谷川学校長。強みは「この14年間、学校がどのような取り組みを行い、どのように子ども達を育ててきたか」を知っていること。今までも、そしてこれからも変わることがない、と長谷川学校長が話すのは教育の指針となる「4つの柱」です。

・確かな学力を育てる教育
・真の国際人を育てる教育
・豊かな感性を育む教育
・高い倫理観と自立心を養う教育
長谷川昭 学校長

長谷川昭 学校長

ICTを活用し、将来に役立つ学びを展開

開校当初からICTを活用した学びに取り組んできた立命館小学校。2012年と早い時期に、5・6年生に1人1台、タブレット型パソコン・Surfaceを導入しました。現在は、「文房具のように使いこなす」ことを目的に、ほぼ全ての授業でSurfaceを活用した授業を展開。児童もWordやExcel、PowerPointを使い、調べ学習の発表などを行っています。

週1時間、情報科の授業も実施。1~4年生で展開されるロボティクス科では、レゴを使ったロボットの製作やスクラッチでのプログラミングを通して、物の仕組みについて学びます。5・6年生のICT科ではマインクラフトを使用し、京都にある世界遺産の建物や伝統建築物を仮想空間に作るという、オリジナリティあふれる授業を展開。このような新しい取り組みを積極的に進めてきた同校は、マイクロソフト社が教育ICT先進校から選出する「Microsoft Showcase School」にも認定されています。

ICTを活用した授業をより効率的に行うために、2018年には新たに電子教卓・HoverCamを導入。HoverCamは、教卓にパソコンを埋め込んだような機器で、PowerPointなどのファイルや画像を、無線接続で電子黒板に投影できるほか、タブレットのように画面を直接触って画像を大きくしたり、文字を描き込んだりすることも可能です。教員はもちろん、子ども達も発表などの際に活用しています。従来から前に立っての発表を重視していましたが、HoverCamを導入することで、よりその機会が増えたそうです。

心と技術の壁を無くす、アウトプットを重視した英語教育

1・2年生は週2時間、3年生からは週3時間、ネイティブと日本人の教員2人体制でオールイングリッシュの授業が行われてます。大切にしていることは、「学んだ英語を、使える英語にすること」。ネイティブ教員が常に身近にいることに加え、夏には立命館アジア太平洋大学から留学生を招いて行われる「ワールドウィーク」もあります。1週間に渡って行われるこの行事では、留学生とのコミュニケーションはすべて英語で行われ、普段の学びを存分に発揮することができます。

また、充実した海外研修プログラムも展開。「子どもたちよ、海を渡れ」というキャッチフレーズのもと、7つの国での語学研修や学校交流を毎年実施。いずれも10~20名と小規模のグループで行われるため、子ども達は現地で英語を話さざるを得ない環境に身を置くことができます。
海外研修は小学4年生から展開され、卒業時には1学年120名の内、100名弱ほどが研修に参加した経験を持ちます。非常に高い参加率ですが、「自分の行きたいタイミングで行くことが大切」と学校側からの強制は一切ありません。

「行くことで、言いたいことをパッと言えるようになります。物の見方や考え方も変わります。心の面でも英語技術の面でも、色んな壁を無くすことができます。海外の人との壁を取り払って、気軽にコミュニケーションをとることができるのが、真の国際人ではないでしょうか。将来、この子達は海外の人たちと共に働く環境に身を置くでしょう。偏見を持たず、相手を尊重するという国際感覚を早くから身に付けることを大切に。コロナ禍でも、ICTを活用して海外との交流を深める方法を模索しています」と長谷川学校長は話されました。

『良い』を認め合い、自身の学びへ生かす芸術活動

1年時から専任教員による指導が行われている図工と音楽。どちらの授業も「認め合い」を大切にしています。図工の場合、作品づくりの途中に、必ずみんなで作品を見せ合って、良い所を評価し合うという集団学びが入っています。人の作品の良い点を認めることを通して学び、それを自分の作品に生かす。集団学びと個人学びを繰り返すことで、自分の思いを作品に出せるようになると長谷川学校長は話されます。

「当校には絵を描くときに隠して描いたり、横を見て同じように描いたりする子はいません。1年生の時に横の子を見て描いていた子も自分の絵になっていきます。それも、集団学びでお互いに認め合ってきたからこそ。認め合うことによって、自分の作品への肯定感が高まり、それぞれが図工や音楽を楽しむ術を身に付けていきます。
校内には図工の作品をたくさん飾っています。それを見た来校者に、これは何かの賞を得た作品ですかと聞かれるんですね。どれも特に賞を得た作品というわけではなく、通常の授業で作ったもの。作り手の自信を感じられる作品が多いという声も頂きます。日々の授業スタイルが生きているのかなと、嬉しく思います」

学校に小さな社会を。豊かな人間関係を育むハウス活動

同校の特徴的な活動であるハウス活動は、1~6年生までを縦割りにした集団活動。各学年1人ずつ計6人のBS(ブラザー&シスター)、BSが5つ集まってできる30人のファミリー、4つのファミリーで構成される120人のハウスの3構成で、ハウスは全部で6つあります。

毎日の掃除をBS単位で行うほか、歓迎会や運動会、送別会など、ほぼすべての学校行事がハウス単位で動きます。 「発達段階が全然違う1年生から6年生までを、各学年1人ずつ構成することで、小さな社会を作ることができます。低学年はお兄ちゃん・お姉ちゃんを目指して、高学年は自分が見本になってということを繰り返していきます」(長谷川学校長)

このハウス活動のグループは最小単位であるBSを含め、6年間変わることはありません。グループ内の児童同士の仲が非常に良く、中学校に上がってからも交流が続くほど。今年で開校14年ですが、グループを変えてほしいと言われたことは1度もないそうです。

保護者アンケートでも、このハウス活動への評価は非常に高く、様々な学校の取り組みの中でも一番高い評価を得ているとのこと。「子どもが喜んでいる」「責任を持った行動をするということの大切さが学べているようだ」という声が寄せられています。

児童との絆を大切にしたオンライン学校再開

同校では4月6日からオンラインによる学びの提供が始まりました。非常に早いスタートには、「休校なんてマイナスなことは決して言わないでおこう。オンラインによる学校再開にしよう」という教員の熱い思いがあったそうです。

同校のオンライン学校再開は、見本となる時間割を提示し、各家庭の状況に応じて進めてもらうスタイルで進められました。子ども達は15~20分に収められた授業動画を見ながらまとめノートを作成し、課題に取り組んだそうです。授業支援ソフト・ロイロノートを使った課題の配信では、児童から提出されたものを教員がチェックし、コメント入れて返却するまで、すべてソフト上で完結。長谷川学校長もICTの利点を実感されたそうです。

学びを届ける中で、同校が大切にしたのは「子どもと繋がっている」ということ。
「ひとりぼっちで家にいる子にも、オンラインを通して先生も一緒にいるんだよということを伝えたい。そうしないと、子どもも教員もしんどくなってしまうと思いました。Zoomで学習相談室を開いた教員もおります。たくさんの子ども達が参加しましたが、特に質問をするわけではないんですね。黙々と勉強する。そこで先生が見ていてくれるというのが嬉しかったようです。離れているからこそ、つながりが大切なのだと感じました」と長谷川学校長。

クラス全員が参加するZoomを使った朝の学活も早い段階から行われていましたが、ゴールデンウィーク明けには週2回から週3回に増やされたそうです。そのことにより子ども達の心が安定し、やる気がアップ。双方向であることの重要性を再認識したそうです。また、保護者との学級懇談会もZoomで開催するなど、家庭とのつながりも大切に学びを進めてきました。

オンラインでの授業配信で、例年通りの授業進度は確保することが出来たとのことですが、「あくまでオンライン上のことなので、夏休みまでにもう一度、1学期の範囲を復習することで定着を図ります」と長谷川学校長は話されました。

まとめ

登校再開後の安心材料として、学校の設えがコロナ対策に非常に適した仕様になっていることも上げられます。まずあげられるのは、オープンスペースを含め、教室は通常の学校の2倍のスペースを持ち、廊下側には壁のないオープンな造りであること。さらに、各学級前には学級専用の手洗い場が設けられていて「換気が良く、密を避けられ、手洗いを励行できる」という感染防止にこの上ない環境です。下校も密にならないよう学年により時間を変えるほか、通学時の電車でのルールも徹底。安心して通うことができる条件が揃っています。

今回のオンラインでの学校再開に手応えを感じたという長谷川学校長。今後の再流行に備え、オンライン教材での学び方もしっかり指導をしていくと話されました。児童との絆を第一に先進的な取り組みを進める姿勢や防疫面で優れた学校環境など、ウィズコロナの時代に、たくさんの強みを持った学校であると取材を通じて強く感じました。

取材協力

立命館小学校

〒603-8141 京都府京都市北区小山西上総町22番地   地図

TEL:075-496-7777

FAX:075-496-7770

URL:http://www.ritsumei.ac.jp/primary/

立命館小学校